●信者さんのおはなし
「山あり谷ありの人生」

金光教放送センター
おはようございます。今朝は金光教のご信心をなさっている方の体験談をご紹介します。
その方は名古屋にお住まいの篠田康子さん、81歳です。篠田さんは、「信心なんて、誰がするものなんだろう、私には関係ないことだ」と長い間、思っていたそうです。そんな篠田さんでしたが、今は、「山あり、谷ありの人生だけれど、全てに深い神様の思し召しがあり、おかげがあると気付かされました」と言われます。どんな経緯でご信心と出合われ、どのように変わっていかれたのでしょうか。お話を伺いました。
篠田さんは25歳の時、お見合いをし、とても素敵な人に出会い、結婚を決めました。そして明日が結婚式、という日に、ご主人となる人に連れて行かれたのが、金光教牧野教会でした。当時は、全くの無神論者だった篠田さんは、それはそれはびっくりしたそうです。背が高く、スポーツ万能で、見るからに頼もしそうな人、と胸をときめかせて結婚を決めた彼が、畳に頭をすりつけて一心に神様に祈っている姿は、初めて見る彼の一面でした。
篠田さんと金光教の出合いはそんな風に始まりました。結婚した時、ご主人はサラリーマンでしたが、新婚間もない時に伊勢湾台風の直撃を受け、家や家財道具一切を失ったのを機会にご主人はすっぱりとサラリーマンを辞め、布団屋さんを始めました。
思い切った脱サラでしたが、当時の布団といえば大切な家財道具。しかも名古屋の嫁入り支度といえば、婚礼布団に100万円を掛ける人も多かったそうですから、先を見越しての転職でした。
篠田さんも店に出て一緒に働き、まったくの素人で始めた商売でしたが、順調に進み出しました。
ところが、そんな頃に、2歳になった可愛い盛りの長女が交通事故で亡くなったのです。その悲しみとつらさは、今でも言葉に表せないほどですが、それから授かった男の子3人の子育てと商売に精を出し、落ち着いた日々を取り戻していきました。
その頃の信心はもっぱらご主人任せ。月に1度、宅祭といって、教会の先生が篠田さんの家に来て下さり、家の神様のお祭りを仕えて下さる時に一緒にお参りし、お話を聞く程度でした。
しかし、子どもたちが順調に育ち、皆、大学に進学するようになると、篠田さんはこの恵まれた境遇に感謝せずにはいられないような思いになり、「それが神様かしら」と思うようになっていきました。
そんな中で、大きな出来事が篠田さんを襲いました。年末も押し迫った大みそかの朝、ご主人が突然、脳梗塞で倒れ、その日のうちに亡くなってしまったのです。
その時ご主人はまだ60歳。またしても最愛の家族を突然に失ってしまった篠田さんでしたが、悲しみに浸っているわけにはいかず、後を継いでくれた次男と商売を続けていきました。ところが、世の中はバブルがはじけ、景気は悪化。しかも生活様式は布団からベッドに、座布団からソファにと様変わりし、布団屋さんにとっては非常に厳しい状況に追い込まれていきました。篠田さんは次男一家のことを考えて、夜も眠れない日が続きました。
さらにそんな中で、三男が30歳を目前に勤めていた会社を辞めて、自分は医者になりたい、医学部を目指したいと言い出したのです。家がこんな大変な時に何を夢のようなことを、という思いと、この子の人生はこの子のもの。親だからと言って無理にやめさせることは出来ない…、篠田さんは苦しみました。
そんな中に、神様にお願いしていけば、きっと良いように導いて下さるという…宅祭の度に聞いていた先生のお話が、むくむくと篠田さんの心に蘇り、「どうぞあの子に一番よい道をお授け下さい」と祈りました。
それからの篠田さんは、家の宗教だからとか、嫁としての務めといった義務感からではなく、自分から進んで金光教の信心をしっかり学ぼうと思いました。頼りにしていたご主人の代わりを神様に求めたのかもしれません。そして、教会に足を運び、教えの本を読むうちに、この信心は人として生きるべき道を教えてもらえる確かな信心だと確信するようになりました。
そんな中で三男は一浪した後、無事、医学部に合格し、今は勤務医となっていきいきと働いていますが、篠田さんにとっては神様に心を向けることで、助かりの世界へと方向転換した大きな出来事となりました。
そして、お店のほうは、「お母さん、これ以上店はやっていけない」と言う次男の言葉に、店をたたむ決心がつきました。気掛かりだった次男の就職もすんなり決まり、これも神様のおかげと思う中で、またまた大変なことが起こりました。いわゆる出世街道を歩んでいた40代の長男が出勤前に突然倒れ、そのまま亡くなったのです。
篠田さんの心には、「どうして」という思いが募りましたが、悲しみの中でも教会に参拝し、祈る中で、「短い一生だったかもしれないけれど、長男は本当に恵まれて暮らし、ずいぶん親孝行もしてくれた、なんと神様に可愛がって頂いてきたのだろう、幸せな一生だったのだ」と思えるようになっていきました。このように思えたことで篠田さんは前を向くことが出来たのです。
今、篠田さんは、ご自分の山あり谷ありの人生を振り返ります。「主人の脱サラもびっくりでしたが、お店を始めたおかげで、いつも一緒にいられて、とても幸せな結婚生活でした。神様のお計らいには本当に深い意味があるのだと思えます。今は先のことはみんな神様にお任せ。それはとても楽なことですよね」と篠田さんは言います。
何が起こってきても、そこに光を見出し、先を楽しむ生き方、それは素敵な生き方だと思います。