被災地の教会から



●教師インタビュー
「被災地の教会から」

金光教放送センター



(ナレ)大分県日田ひた市にある金光教大鶴おおつる教会の江田泉こうだいずみさんは、金光教教師として教会で奉仕しながら、災害復興支援活動にも取り組んでいます。
 支援活動を始めようと思ったきっかけは、阪神淡路大震災の復興支援活動に参加したこと。被災した町の姿や、避難所に身を寄せる人の表情を目の当たりにし、「何か少しでもお役に立ちたい」という思いを強く抱くようになりました。
 その後、江田さんは、そこでの経験と「お役に立ちたい」という思いから金光教の教師になりました。そして、岡山県にある金光教本部の職員をしていた平成23年、東日本大震災が起こります。

(江田)東日本大震災が起きて、現地の様子を調査するという役目を教団から頂いて、東北に行かせてもらいました。けれども、その時には支援活動をするという目的では行ってませんので、お手伝いすることがほとんどできないまま帰ってきたんです。その時に、「こういう時にこそお手伝いをしたくてこのお道に入ったのに、何もできないってどういうことなんだ」と、心が行き詰まったというか、魂が抜けたような感じになって、数日過ごしていました。その時、当時教務総長だった佐藤光俊先生に、自分の思いをお話しさせてもらったんです。そうしたら、佐藤先生が、「私は、『私がやらなければならないことは何なのか』ということを問題にしています」とおっしゃいました。その言葉が、今の私の問いとしてずっと私の中で生き続けてるんですよね。今、私としてすべきことは何なのだろうかと。宗教者として、金光教の教師として、すべきことは何なのかと。

(ナレ)自分のやりたいことに固執するのではなく、置かれた環境や立場の中で、自分がやらなければならないことは何なのかと常に問いかける。それが、江田さんの活動の土台となっていきました。
 その数年後、江田さんは大分に帰り、家族とともに教会で生活をすることになります。そして、どこかで災害が起きると、単身で被災地に入り、そこで行われる復興支援活動に加わるようになりました。そんな中、平成29年、九州北部豪雨に遭い、今度は自身が被災者となります。

(江田)教会の上手1キロぐらい先の堤防が決壊して、その水が濁流となって流れてきました。教会も床上2メートルまで水が押し寄せてくるという被害を受けました。水が去った後は床上50センチの土砂が残って、町中に土砂と流木が至る所に流れ付いているような状況で、途方に暮れるような状況だったのですけど、そういう中で、自分はどうさせていただくかと考えました。教会を修復したその後に地域のことをさせていただこうかとも思ったんですが、地域全体が被災している中で、「お役に立たせていただきたい」という思いがやはりありまして、「徹底的に地域のお役に立ちたい。立たせていただこう」と思ったのです。
 教会が被災してから3カ月ぐらい経った頃に、地域の方が、「教会のことはしなくて大丈夫なの?」というようなことを言うてくださることがだんだん増えてきました。けれども、そういう中で答えさせてもらっていたのが、「『自分のことは置いといて人のことを先にさせてもらったら、自分のことは神様がいいようにしてくださる』という教えが金光教の中にはありますので、私は今それを実験実証しています」ということを地域の方に言っていました。「あんた、それを真面目に信じとんかい」「はい、信じてやってみてますんで、結果を見とってください」というような会話をすることが増えてきました。
 そこから数カ月経って、地域のこともだんだん落ち着いてきて、教会の復旧復興ができてきたようなことでした。

(ナレ)地域の復旧作業に当たる中で、江田さんが言い続けてきたことがあります。それは、「絶対大丈夫だから」という言葉。地域を見渡した時に、一番被害が大きかったのは教会でした。にもかかわらず、教会を後回しにして、地域の復旧作業に取り組んだ江田さん。そんな姿を見ていたからか、「あなたが大丈夫って言うんだったら、うちも大丈夫」と、元気を出して帰られる方もいたそうです。
 「一番被害の大きかった教会から『大丈夫』を発信することで、いい働きができたのかな」。江田さんは当時をそう振り返ります。
 たとえ自らが被災したとしても、いつもと同じように、「今やらなければならないことは何か」と考え、行動していく。それは、江田さんの中で揺るぎないものとなっています。そして、その根底にあるものは、神様への祈りだと江田さんは言います。

(江田)私が被災地に行けばお役に立てるということは約束されているわけでも何でもなくて、実は、初めて行くような被災地では、どういったお役に立てるんだろうというようなことは分からないまま行かせてもらっています。けれども、祈りながら行かせてもらっているというのが、実は本当のところかもしれないですね。その中で一つひとつこれまで使っていただいたのかなと、最近強く思うようになってきましたね。そこを信じて動けばお役に立てるんじゃないのかなって。祈りながら活動させてもらうということをさせてもらっています。

(ナレ)何も分からないままでも、祈りながら行動すれば、神様が導いてくださる。そう信じることが、江田さんの活動を支える大きな力になっています。

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