ラジオドラマ「こんにちは、金光さま」第2回「病み袋」


●ラジオドラマ「こんにちは、金光さま」
第2回「病み袋」

金光教放送センター

登場人物
 ・ミツ    8才
 ・吾一ごいち    8才
 ・母(ミツの母)30代
 ・孫     8才
 ・教祖


吾一 やーい、ぶくろ、病み袋。
ミツ 違うよ! あたしの名前はミツよー。
吾一 この間の運動会でも走らなかったじゃないかー。
ミツ 走らなかったけど、応援してたわよ!
吾一 駆けっこにも出ないなんて、病み袋だ!
ミツ 病み袋って、何よ!
吾一 ミツは病気の袋だ、みんなそう言ってるよー。
ミツ 吾一の意地悪…!(泣き出す)母ちゃんに言いつけてやる。

母 そう、そんなことがあったの。そりゃミツはもともと体が弱いし、時々学校もお休みするけれど…。ねえミツ、今度金光様の所に一緒にお参りに行く?
ミツ 母ちゃんがいつも行っている所?
母 そうよ。
ミツ 金光様って、白い長いひげのおじいさんかなあ…?
母 (笑う)ねえ、そして、ミツの思っていることをお話してみたら?

(小鳥の囀り)

ミツ 晴れた日、母ちゃんと金光様の所に行った。

ミツ わあー、こんなに絵馬がたくさんある! ねえねえこの船の絵、あたし好きだなあー。
母 それはねえミツ、船が難破しかけた時、助かった船乗りさんが、お礼にここに掛けたの。さあいつまでも絵馬で遊んでないで、早く金光様にごあいさつしましょうね。
ミツ あそこに座っている白い着物に黒い羽織の人…。ねえねえ母ちゃん、あれが金光様?
母 そうよ。
ミツ (独り言) なーんだ白い長いひげのおじいさんじゃないんだ。おじいさん、こんにちは…。
母 ミツ、何てこと言うの。
教祖 ハハハ…。ミツさんから見れば十分におじいさんですよ。よう来られましたなあミツさん。
ミツ はい。
教祖 ミツさんは、今こう思っているのではないかな。
ミツ え?
教祖 「私の長い眉毛が目にかぶさりそうだ、気になってしょうがない。ちょっと引っ張ってみたい」とね。
ミツ はい、そうです。ゆらゆら動いて面白いです。
母 もう、ミツ、何てことを!

ミツ 母ちゃんはあたしをにらんだ。でもおじいさんはにこにこしている。

ミツ 金光様、あたしは学校の友達に「病み袋」って言われています。それで悔しくって…。
教祖 それはねミツさん、ミツさんの家は海のそばでしょう、寝ている時、波の音がバザーバザーと聞こえるよねえ?
ミツ はい、聞こえます。
教祖 朝、目がさめて波の音が聞こえたら、「天地の神様、私は何も分からずに眠っておりましたが、目がさめたらこうして生きております、波の音が聞こえます。今日の命を頂きましたことをお礼申し上げます」と言うんだよ。分かるかなあ。
ミツ はい、分かります。
教組 そして次に、お天道様が照っているだろう。
ミツ はい。
教祖 そのお天道様に、「今日もお日様を拝ませて頂きまして、ありがとうございます。今日一日、天の神様、地の神様、私が元気で役に立つように、どうぞ助けて下さい」、そうお願いすればいいんだよ。生きているから、喜ぶことも、悲しむことも出来るし、また病気にもなる。まず生きていることに、神様にお礼を言うのだよ。ちょっと難しいかなあミツさんには…。
ミツ 分かりました。今まであたしは「病み袋」なんて言われて、お天道様を恨んでいました。ごめんなさい。
教祖 ハハハ…。ミツさんは良い子だ。「病み袋」なんて言われても、もう気にすることはないんだよ。

ミツ 金光様の言われたことは、本当はあたしにはちょっと難しかった。でも、あの眉毛のおじいさんは大好きになった。

(海、波の音)

ミツ(元気な笑い声)
母 ミツ、そろそろ帰りましょう。
ミツ もうちょっと…。
母 疲れてない?
ミツ 大丈夫よー、お天道様が守って下さるから。あっ、これ奇麗、わあー、母ちゃん母ちゃん…。
母 どうしたの?
ミツ あっ、あのね、あの…。ううん、何でもない、内緒。
母 変な子ねえ。

(波の音徐々に消えて)

ミツ あたしは母ちゃんにお願いして、またあの眉毛のおじいさんの所に行った。

ミツ おじいさん、こんにちは。
母 (小声) ミツ、金光様と言いなさい!
教祖 ああ、ミツさん、こんにちは。
ミツ おじいさんに…。
母 ミツ!
みつ あ、金光様に…。
教祖 おじいさんでいいんだよ。
ミツ この間、海に行きました。
教祖 楽しかったかい?
ミツ はい、それでこれはおじいさんへのお土産です。
教祖 ほうー、これは奇麗な巻き貝だね。私のために取ってきてくれたのかい?
ミツ はい、そうです。
教祖 おやー、耳に当てると、波の音がするよ。
ミツ 本当? 
教祖 ほら、聞いてごらん。

(かすかな波の音)

ミツ 本当だ。聞こえる聞こえる。うれしいなあー、あたしはおじいさんと一緒に海に行きたかったの。でも母ちゃんが、駄目だって。
教祖 ありがとう、ミツさん。

ミツ こうして度々お参りし、神様にお喜び頂けるような一日が過ごせますようにと願いながら、命のお礼を申しました。
気が付いたら、「病み袋」の私は88歳を迎えていました。

孫 おばあちゃんおばあちゃん、お誕生日のお祝いの支度が出来たって、お母さんが呼んでるよ。

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