●天地は語る
第2回「油断、慢心、大けがのもと」

金光教放送センター
ナレ 「猿も木から落ちるという。木に登っても、危ない危ないと思っていると、用心するからけがはないが、少し上手になると、大胆になって大けがをしたり命を落としたりする。慢心は大けがのもと、健康であっても信心の油断をしてはならない」
これは、金光教の教祖、金光大神の教えの一つです。今日は、この教えについて、先生にお話をお伺いします。
聞き手 先生、よろしくお願いします。
先 生 こちらこそよろしく。
聞き手 今日の教えの中にあります「猿も木から落ちる」は、私にはとても耳の痛い言葉なんです。
先 生 そうなんですか、これは油断や慢心を戒めた「ことわざ」なんですがね。
聞き手 私、子どもの頃から油断や慢心が多くて、失敗ばかりしているんですよ。最近もやってしまいました。
先 生 えっ、どんなことですか。
聞き手 車の運転です。私、免許を取ってからずっと慎重に運転していたんですよ。それで、ずっと無事故無違反で、免許証ももちろんゴールドです。本当に安全運転なんですよ。
先 生 それはいい心がけですね。
聞き手 ところが先日、隣に友達を乗せて運転していたら、そのことが話題になって。それで、友達から「ずっと無事故無違反はすごいわね、あなた運転上手なのね!」って言われて。そう言われると、ついいい気になってアクセルをちょっと踏み込んだ途端、ちょうど警察が取り締まりをやってて、スピード違反で停められてしまいました。
先 生 ああ、つい慢心が出てしまいましたね。でも、スピード違反で捕まったことは残念でしょうが、事故に遭ったりけがをしていたらもっと大変だったのではないでしょうか。恥ずかしい話、私は痛い目にあって気付かされたことがあるんですよ。
聞き手 え~、先生がですか?
先 生 はい。1年前のことですが、妻から頼まれて洋服の入った箱を2階へ持って上がることになったんです。こう見えても私は意外と力持ちなんですよ。若い頃空手をしていましたから。それで力仕事はいつも任されるんですが、その時は思ったより重くなかったんです。こんなに軽いのなら自分で運べばいいのにと思って、2個目の箱を持ち上げた瞬間、やってしまいました。ぎっくり腰です。そこからもう動けません。大変でしたよ~。
聞き手 そうなんですか。
先 生 病院で「ぎっくり腰は案外軽いものを持ち上げた瞬間なったりするんですよ」って言われたんです。日頃の運動不足と年齢による筋力の衰えを指摘されてしまい、確かに思い当たることだらけでした。でも、私は若い頃からの力自慢でつい慢心が出てしまい、また荷物も軽かったので油断してしまいました。
聞き手 先生でもそういうことがあるんですね。
先 生 人は健康であれば、何でもできることがつい当たり前になってしまうんです。健康のありがたみは病気やけがをして初めて気付くと言ってもいいかもしれませんね。私もぎっくり腰になった時は、いつにもまして神様にお礼申しました。
聞き手 えっ・・・お礼ですか?
先 生 はい、お礼なんです。もちろん早く治ることもお願いしましたよ。でも、ぎっくり腰になってみて、健康な時はそれ程気にもかけなかったことができていたんだと改めて気付かされたことに、神様にお礼申し上げたくなったんですよ。私たちは、水や空気、食べ物など神様のお恵みやお働きがあって、生かされて生きているお互いなんですね。でも、病気やけがの時だけ神様にお願いし、健康であれば神様を抜きにして、あたかも自分の力だけで生きているように振る舞ってしまいます。やはり健康な時の心がけが大切なんですね。あなたもこれから、車を運転する時は、神様にお願いして、させてもらったらどうでしょうか。
聞き手 はい。私も都合のいい時だけ神様にお願いしていて、普段はやはり神様を抜きにしていました。これからそうさせてもらいます。ところで、教祖様には油断慢心など無かったんですか。
先 生 こんな話がありますよ。教祖様の元に、有名な柔道家がお参りに来て「金光様、あなた様ぐらいの信心がおできになりましたら、もう安心でございましょうなあ」と言ったそうです。すると教祖様は「いいえ、そんなことはございません。あなたこそ、日本で5本の指に数えられるような達人ですから、もう安心でしょう」と反対に聞き返しました。柔道家は「いいえ違います。普段、ただ道を歩いていましても、十分に注意をして歩いています」と答えたそうです。その答えをお聞きになり、教祖様は「あなたもそうですか。私も同じことで、油断をすれば、いつ何時、神様からお暇が出るか分かりません」と言われたといいます。
聞き手 へえ、今の話からすると、教祖様でさえ常に信心の油断や慢心に対して取り組んでおられたのが分かりますね。
先 生 そうですね。油断や慢心は無くなるものではないのかもしれません。無くなったと思った瞬間に、また油断慢心が生じているとも言えますからね。私たちも信心の油断をしないように、何事も一日一日時々刻々に神様にお願いしながら取り組んでいくことが大切だと思いますよ。
聞き手 はい。先生、今日はありがとうございました。
先 生 こちらこそ、ありがとうございました。
ナレ 「猿も木から落ちるという。木に登っても、危ない危ないと思っていると、用心するからけがはないが、少し上手になると、大胆になって大けがをしたり命を落としたりする。慢心は大けがのもと、健康であっても信心の油断をしてはならない」
今日はこの教えについて先生にお話をお伺いしました。