幸せを生む生き方


●金光教教務総長・年頭放送
「幸せを生む生き方」

金光教教務総長きょうむそうちょう
西川良典にしかわよしのり 先生


 皆様、新年おめでとうございます。ともどもに平成31年の新春を迎えさせていただきましたこと、心よりお慶び申し上げます。
 信心といいますと、つい難しく考えてしまうところがありますが、信心は生活の中にあるわけですから、何か特別なことをするのではありません。
 金光教には、「あいよかけよで立ち行く」という言葉があります。それは、「あなたがあって私がある」という関係をつくり上げていくことによって、お互いが助かっていくという意味です。
 身の周りの方に対して、「あなたにお世話になっています。ありがとうございます」という思いで接していきますと、自分の気持ちが穏やかになり、相手の方も喜んでくださいます。
 これは物に対しても同じことで、私たちは衣食住のお恵みを頂いて生きていくことができていますが、そうしたお世話になる物にもお礼を言い、大切にするという生き方が助かりの姿になっていくのです。
 金光教の前教主金光様は、次のようにお話しくださっています。
 「私は、眼鏡を掛けておりますが、朝起きてから晩寝るまで、一日中、眼鏡のお世話になっております。いつも、この眼鏡が人間だったらどうだろうと思うのです。日当を出して、時間外手当ても出し、夜食も出して、今日は遅くまで本当にご苦労でございました、ありがとうございましたと、お礼を言うに違いありません。
 ところが、眼鏡がものを言わないので、つい、お世話になっていることを忘れがちなのです。私は、眼鏡を掛けたり外したり、拭いたりする時、いつもご苦労さま、ありがとう、という心を持って、扱わせてもらうように心掛けております。
 眼鏡だけではありません。衣食住全て、お世話になり通しになっている私です。私は、お世話になる全てに対して、お礼の心を忘れないようにと、そういう心を持ち続けさせてもらいたいと、願い続けております」というお話です。
 ある酪農家の方の話です。その方は、長年、信心されていて、乳牛を一家の恩人として大切にされ、またそのような生活をなさっています。
 毎朝、何十頭という牛に向かって柏手かしわでを打って、「あなたたちのおかげで、酪農家として生計が成り立っております。今日もよろしくお願いします」と心からお礼を言い、お願いなさっています。そうしますと、一般的な乳牛よりもたくさん乳の量、乳量が出て、しかも、脂肪の割合が高く、値段がいいということです。
 「あなたさまのおかげで、今月はこれだけの乳量を頂くことができました。売り上げ代金はこれこれしかじかでございます。ありがとうございます」
 このように、牛を前に心を込めてお礼を言いますと、相手もそれに応えるという働きになって現れてきます。牛が喜んでくださり、乳量をどんどん増やしてくださるんです。
 「あなたがあって私がある」関係というのは、毎日の生活の中で、相手を敬い、尊んでいくという生き方です。そういう生き方を進めていくことで、相手が喜び、自らも助かっていくことになっていくのです。
 このあり方を夫婦に置き替えてみるとどうでしょうか。
 例えば、夫がサラリーマンで、奥さんが専業主婦のご家庭の場合で言えば、夫が、「わしが働いているから、家族を養えているんだ」という思いでは、恩人に対する仕え方ではありません。
 また、奥さんは夫が元気で会社で働いていることに、どれほどの喜びとお礼の心を持っているでしょうか。
 夫婦で毎日を元気に過ごさせていただいていることが、どれほどありがたいことであり、そのことをどこまでかみしめているのか、ということです。
 それぞれの人生を大きく支え合っているお互いです。夫なら夫、妻なら妻、子どもなら子どもに対して、心からのお礼が言えているでしょうか。
 子どもは親にとって大恩人です。子どもを授かったから、親にならせていただいたのです。今まで、子どもがどれほどの生きがいと喜びを与えてきてくれたことでしょうか。
 「あなたがあって私がある」という関係は、常に相手を立てる、相手に喜んでもらう、ということです。それは、人様に対してだけではなく、お世話になる物に対してもそういう関係に立つことが大切なんだということです。
 朝起きた時、一晩お世話になった布団を押し入れにしまうのでも、「あなたのおかげで、ゆっくり休ませていただくことができました。疲れを取ってくださり、ありがとうございました」。
 雨が降っている日には、家に対して、「あなたのおかげで、雨に当たらずに住まわせてもらっております。ありがたいことです」と家にお礼を言う。
 全てにおいて、世話になる物を恩人として敬い、感謝の気持ちを持って生活をさせていただくことが、「あなたがあって私がある」という関係になっていくのです。
 私たちのいのちを支えてくださっている衣食住は、ものこそ言いませんけれども、よく分かっています。その衣食住にお礼を言っていく稽古を始めていけば、家族の中に感謝し合うという関係が生まれてきます。
 お互いに楽しく平和な家庭をつくっていきましょう。
 どうぞ、皆様にとりまして、今年が良い年になりますように、お祈り申し上げます。

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