音が聞こえる


●信心あればこそ
「音が聞こえる」

金光教放送センター


(ナレ)兵庫県の北部にある香美かみちょう小代おじろ。美しい滝があり、棚田が広がります。その小代にお住まいの尾崎保子おざきやすこさん、69歳。尾崎さんの家は、おじいさんの代から金光教を信心しています。

(尾崎)とにかく毎日本当に柏手を打って、「ありがとうございます」。お風呂に入っても、「ありがとうございます」。ご飯を食べても、「ありがとうございます」というふうに、もう常に、「ありがとうございます、ありがとうございます」と、もう祖父母と両親は必ずそういうことをしていたので…。
 毎朝祖父母や両親がご神前に向かっているのを見て育ちました。

(ナレ)そのような環境で育ったせいか、尾崎さんも自然に神様に手を合わせるようになっていました。
 今から30年以上前、尾崎さんが30代のころです。ある日、突然目が見えなくなりました。

(尾崎)突然…、もう突然ほんまに失明して、いきなり見えなくなったんですけど、もう一生治らないかも分からないですよ、って言われてね。
 何か妙に体が少ししんどいなと思ったんですけどね。それで、涙も出ないし、目が真っ赤になってきて、「結膜炎かなあ」って言うてたんやけど。

(ナレ)病院へ行くと、「ぶどう膜炎」と診断されました。お医者さんからは、「いつ治るか分からない、一生治らないかもしれない」と言われました。

(尾崎)この目の玉に注射するんですけど、もう死ぬほど痛いんですよ。「これ以外に治療はないんでしょうか」と聞いたら、「ないです」と言われて…。もう本当にね、目に刺すから、自分には見えないんやけど、刺したら血が出ますよね。目から血の涙が出てるんですって。主人に聞いたら、「恐ろしかった」って言ってましたけどね。
 夜真っ暗なのにね、電気をつけるとね、何か神経に障るんですね。真っ暗やから分からないはずなんやけど、「今、電気をつけた」「消した」というのが、すごく分かるんですね。
 とにかく光をシャットアウトしないと、神経に障るものですからね。バスタオルかぶって、その上から布団を掛けて、それでも神経に障りましたね。

(ナレ)もう目が見えないかもしれない。普通なら平常心ではいられないところですが、尾崎さんを力強く支えてくれたのは信心でした。

(尾崎)部屋でゆっくり休ませて頂いて、目は見えないんですけど、横にならせて頂いて、ずっと音を聞いてると、「音って、こんな素晴らしいもんやったんやな」というのが、改めて、感じることが出来たんですね。
 何て言うかな、音…、目が見える時は、そんな耳を傾けるなんていうことはなかったんですけど、主人の足音、お客さんの足音、鳥の声、そういうものが聞こえてくるのがね、幸せやなあと、すごく感じたんですね。
 もう目が見えなくなったって言われても、本当に安らかに、「うわ、どうしようどうしよう」とか思う気持ちは意外となかったですね。それで、台の上に神様をお祭りしてあったんですが、「金光様、今日もありがたいですね」とか、独り言を言ったりしてました。慌てふためかないで、穏やかに横になれて、いつ目が見えるとも分からないのに、本当に穏やかな気持ちでいられたっていうのはやっぱり信心のおかげやったと思うんですね。
 神様を信心してなかったら、多分、泣き叫んだり、わめいたりしてたと思うんですけど、それをすることなく本当に穏やかに音を楽しむことが出来たんですね。
 でも、本当にそれが40日で見えるようになったんですよ。病院の先生が、「もうこんなの奇跡的なことやで」と言われて、「あ、そうなんですか」って…。まあ当分の間はサングラスを掛けてたんですけど、その内に徐々に見えるようになって、それでもう普通通りの生活が出来るようになったんです。

(ナレ)尾崎さんは目が見えなくなった時のことについて、後々になって初めて知ったことがあります。

(尾崎)父が亡くなってから、遺品を整理していたら、ぎっしりと私の目のことをご祈念したことが書いてあったのを見て、もう本当に感無量になりました。
 毎日ご祈念してくれてたんやろうね。そんな毎日毎日、神様にすがってね、そんな祈ってくれてるということは全然分からなかったですね。だけど、亡くなってもう本当に何年かして、父の書類を整理していて、「ああ、こんなことがあったんやな」というのを見付けてね。それでまた胸が熱くなりましたわ。自分では知らない内でも、周りの人がそうやって一生懸命お願いして下さっていたんやなと思ったら、やっぱり自分も今度は困ってる人のことを助けていかなあかんなあっていうのは思わせて頂きましたね。

(ナレ)改めてもう一度、尾崎さんに「信心していて良かったと思うことは何ですか」と尋ねてみました。

(尾崎)信心してて良かったなあと思うことはね、神様が常に側にいて下さるっていうことが一番、やっぱり生活していく上で強みですし、幸せだなと思いますね。だから、慌てるでなく、本当に穏やかな気持ちで、物事を見ることが出来たり、自分にそういうことが降り掛かっても、本当におかげやなと、素直に思える自分がね、やっぱり、そこは信心のおかげやなあと思わせて頂きますね。
 もう本当に、その都度その都度助けて頂いてるんで、心が穏やかで、元気でいられるっていうのはもう最高のぜいたくかなと思いますね、やっぱり。うん。幸せです。そういう風に思えるのが。

(ナレ)尾崎さんは、今の自分たちの幸せは、祖父母や両親が残してくれた信心のおかげだと言います。その信心をしっかり受け継いでいきたい。自分の子どもや孫たちが幸せになるために、神様と一緒に今を精いっぱい生きていきたい。そう願う尾崎さんでした。

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