●天地は語る
第3回「柱とのれん」

金光教放送センター
(ナレ)「建てた柱はたおれることがある。吊ったのれんにもたれる心になっておかげを受けよ」
これは、金光教の教祖、金光大神の教えの一つです。今日は、このみ教えについてお伺いします。
(聞き手)先生、このみ教えってどういう意味なんですか?よく分からないのですけど。だって、柱って、しっかりしているものじゃあないですか。ご近所の新築工事の様子を見ていると、杭を打ったりして、随分しっかり立てていますよ。「吊ったのれん」って、布のぶら下がっているあののれんですよね。
(先 生)そう、おもしろいでしょ。とても心がひかれるのです。まず、教祖様らしいなあと思うのですよ。ちょっと、とんちのようでしょ。
(聞き手)へえー、やっぱり、とんちなんですか。教祖様って、どうしてそんな風におっしゃったんですか。
(先 生)それはね、私たちが当然こうだ!と決めつけていることを、ひっくり返して、「本当にそうなのか?」と問いかけておられるのです。大切なことを分かってもらいたいという切なる願いがおありになったのです。どうしても幸せになってほしい。神様のおかげを頂いてほしい。だから、そのために、色々な例えを使って、説かれたのでしょうね。
(聞き手)そうなんですか。そうまでして伝えたい大切なことって、いったいどういうことでしょうか。
(先 生)では、み教えの内容に話を戻しましょう。柱だって、やはり倒れますよ。いいかげんな柱であれば建物は簡単に崩れてしまいます。これなら大丈夫と思っていた物が、案外大丈夫ではなかったということがあるのです。つまり、あなたは、生きていく上で、何にもたれますか、ということです。「もたれる」つまり「頼りにする」ということです。人間は誰しも弱いものですから、何かに頼ろうとするのは仕方がないことで、けっして悪いことではありません。しかし、何を頼りにして生きるか、その何かが問題となります。まず、あなたの大切な物を思い浮かべて下さい。
(聞き手)えーっと、私は主婦ですから、こういう時代になると生活が不安です。やっぱりお金は頼りになりますよね。
(先 生)まあ、それはそうですね。もちろん、お金はなくてはなりません。他には何を思い付きましたか。
(聞き手)私、困ったことがあると、いつも周りの人に頼ってしまうんです。つい、家族や友だちに甘えてしまって、迷惑をかけることが多いんです。それで、反省してしているんですけど…。
(先 生)それは、人を当てにし過ぎる、いうことですよ。人のお世話になることは大切なことです。人のお世話にならずには人間は生きていけませんが、お世話になることと「当てにする」というのは、ずいぶん違うのですよ。では、健康はどうでしょう?
(聞き手)そうですね。「体が資本」って言いますよね。
(先 生)あなた自身、以前とても大きな病気をされましたよね。
(聞き手)はい、手術も長時間にわたりました。今ではすっかり良くなりました。お医者様にも感謝しています。
(先 生)それほどの大病になった時、何が一番大切と思いましたか。やはり、お金でしたか?
(聞き手)いえ、もちろん、治療や入院の費用の心配もしました。主人にも申し訳なくて。でも、入院中は、何よりも子どもたちのために何としても生きていたい、という気持ちでいっぱいでした。
(先 生)そうでしたね。手術が成功しますようにと一生懸命に神様にお願いしてましたねえ。
(聞き手)はい。あの時、このまま死んでしまったら、今まで自分は何をしてきたのだろう? 何が残るんだろうって思いました。お世話になった方にも、家族にも、何もできていなかったなあーって。もっともっと人のお役に立てることができたんじゃないかなあと思いました。いくらお金とか物があっても、あの世には持っていけませんからね。
(先 生)そうですね。お金や物は価値があって、しっかりしたものかというと、そうとも限らない。それに対して「心」とか、「気持ち」は、目には見えませんが、頼りになるものですね。入院されていた時には、家族の優しさや思いやりは、うれしいものだったでしょう。
(聞き手)ええ、入院中はみんなに支えてもらい、家族ってありがたいなあと思いました。先生が神様に祈っていて下さったおかげで安心して受けられました。
(先 生)目に見えない、そんな頼りなさそうなものを頼りにして生きる。これはすごいことですよ。神様も同じですね。それを、教祖様は、「吊ったのれんにもたれる心になっておかげを受けよ」とおっしゃっているのです。
(聞き手)はい、ああ、そういうことですか。
(先 生)ですから、まず、日常生活の中で、私たちが目に見えないものに、どれほど支えられているか、ということに、気付くように心掛けましょう。木を見てご覧なさい。木の根は目には見えません。けれども、地中にしっかり根を張っているから、枝葉が栄えるのです。
(聞き手)私たちは目に見えないものに支えられて、生きているんですね。
(先 生)そうです。そのことに気付いて、幸せだなあと思うことが大切なことだと思います。そしてまた、あなたの優しさや思いやりが、どれほど多くの人を支えていくか分からないのですよ。
(聞き手)そうですね。目に見えないところをもっともっと大切にしていきたいと思います。先生ありがとうございました。
(先 生)ありがとうございました。
(ナレ)「建てた柱はたおれることがある。吊ったのれんにもたれる心になっておかげを受けよ」
今日は、このみ教えについてお伺いしました。