●天地は語る
第3回「海は誰のもの?」

金光教放送センター
ナレ 「この大地もその他の物も、みな神の物であるのに、わが物である、わが金ですると思い、神にお願いしないでするから、叱られるのは無理もない。家を建てるにも、神にお願いして、神のお土地をお借りし、今までの無礼をおわびして建てればさしつかえない」
これは金光教の教祖、金光大神の教えの一つです。今日はこの教えについて先生にお話をお伺いします。
聞き手 先生こんにちは。
先 生 はい、こんにちは。
聞き手 先生、今の教えの「この大地」や「その他の物」というのは、例えば、今私たち人間が住んでいる土地や家のことなんかを指しているのでしょうか?
先 生 そうですね。
聞き手 じゃあ、私の家も土地も、全部神様の物、ということですか?
先 生 もちろん、そうですよ。
聞き手 え~、何かショックです。この春、やっと手に入れた一戸建てが自分たちの物ではないなんて。
先 生 自分の名義になったから自分の物、のように思っていたんですね?
聞き手 はい。
先 生 そうですねえ、確かに自分の名義になったら、自分の物のように思いますよね。私も若い頃には、そんな気がしていましたよ。でも、ある時から、何かそれは違うなあ、と思うようになったんです。
聞き手 そうなんですか。
先 生 私は若い頃、海釣りが大好きで、よく行ってたんですね。時には友達に船で連れて行ってもらったりもしていました。で、そのうちにだんだん気が付いたんですが、あの広い海ですが、誰でも自由に、どこで釣ってもいい、というわけではないんですよ、知っていました?
聞き手 ええ? そうなんですか。知りませんでした。でも先生、海ってずっと昔からあるもので、誰の物でもありませんよね? だったら、どこで釣りをしてもいいような気がするんですけど?
先 生 海には漁業権というのがあって、誰でも自由に、というわけにはいかないんです。でも、それだからといって、海が〝特定の人の物〟というわけではないんですよね。
聞き手 そうですよね。海は昔からあるんですから〝誰かの物〟というのは変だと思います、絶対。
先 生 だったらそれと同じように考えてみてください。この土地も海と同じように、昔からありますよね。それを、お金を出したから自分の物、というのはおかしくないですか?
聞き手 そう言われてみるとそうですね。そんなこと、今まで一度も考えたことありませんでした。
先 生 海だと「何かおかしい」と感じても、このお土地については「ここは誰々さんの土地」なんていう言い方に慣れているからでしょうね。「土地は昔からあるのに、個人の物なんて、それはおかしい」とは誰も言わないですね。
聞き手 そうですね。
先 生 ずっと昔からあるはずなのに、お金を出して買ったりして、いわゆる〝土地の所有者〟が生まれる。それで、所有者になった人は「ここは私の物」ということで、自由にしてもいい気持ちになるんでしょうね。
聞き手 じゃあ、先生、土地もその他の物も神様の物、というのはどういうことですか。
先 生 そうですね、このお土地には、先ほどの海もそうなんですけど、人間やその他の動物や植物を生かし、育むという働きがありますよね。
聞き手 生かし、育むですか?
先 生 はい。例えば「米や野菜を作った」なんて言いますが、厳密に言うと、本当は「天地のお働きで育った」と言う方が正しいのではないでしょうか。もちろん、人間は土地を耕したり肥料をやったりして、その天地の働きを助ける、ということはしてますけど。元はお百姓さんだった教祖金光大神は、すべての物を生かし育むという、天地の働きを見て「この天地こそ、まさに神様だ」と気付かれたのでしょう。言うなれば、天地は神様そのものなんです。ですから、農作物も、それから海の魚も、全部神様の物、というわけなんです。そんな天地に、われわれ人間が後から住まわせてもらうようになったんですね。まあ言うなれば、神様から間借りしてるようなものです。
聞き手 間借り、ですか。
先 生 そうです。間借りをしているのですから、自分勝手に自由にしていいわけがない。ですから、家を建てたりする時には、神様にちゃんとお断りをしてから建てる、というのは、むしろ当たり前のことなのかもしれませんよね。
聞き手 じゃあ先生、教えの「叱られるのは無理もない」というのは、どういうことですか?
先 生 それは、昔ある人が「神様なんて関係ない」と言い張って、自分勝手に家を建てようとしたけど、いくら頑張っても成就しなかった、ということがあったんです。
聞き手 そんなことがあったんですか。
先 生 でも「神様に叱られるから、ちゃんとお断りしなさい」というのではなくて、「神様のお土地だから、お断りしてから建てなさい」と言っているんですよ。でも、自分の物だと思うと、なかなかそれができないんでしょうね。それで無礼になる。
聞き手 無礼、ですか?
先 生 はい。無礼というのはその字の通りで「礼がない」ということなんですね。お土地に、つまり神様にお世話になっているのだから、そのことをちゃんと「ありがとうございます」とお礼して、それから「神様、家を建てさせていただきます」とお断りもして、それから普請することが大事だと、教祖様は仰っているんです。
聞き手 先生、よく分かりました。私も今日から、神様から間借りさせてもらっていると思って、感謝しながら住まわせていただきたいと思います。 先生、今日はありがとうございました。
先 生 はい、ありがとうございました。
ナレ 「この大地もその他の物も、みな神の物であるのに、わが物である、わが金ですると思い、神にお願いしないでするから、叱られるのは無理もない。家を建てるにも、神にお願いして、神のお土地をお借りし、今までの無礼をおわびして建てればさしつかえない」
今日はこの教えについてのお話でした。