命へのまなざし


●共に生きる
「命へのまなざし」

金光教放送センター


(ナレ)愛知県に住む佐々木幸穂ささきさちほさんは、現在23歳。名古屋大学の大学院でカワウという鳥の研究をしています。といえば長良川ながらがわの鵜飼いが有名ですが、鵜飼いの鵜はカワウではなくウミウだそうです。では、カワウというのは一体どういう鳥なのでしょうか。

佐々木)普段私たちが目にする鵜っていうのは、ほとんどがカワウです。特徴としては、そうですね、くちばしが黄色で、目が奇麗な緑…青みがかったエメラルドグリーンっていうんですか…すごい奇麗な緑で、他の所は真っ黒…で、くちばしの先から尻尾の先まで大体80センチで、翼を目いっぱい広げると130センチぐらいになる大きな鳥なんですけど、私としてはすごく可愛くて奇麗な鳥だと思ってるんですけど…

(ナレ)現在、野生のカワウが養殖の魚を食べたり、糞をして木を枯らしてしまうという問題が取りざたされ、カワウは一部の地域では害鳥として扱われています。佐々木さんは大学に在学中、かわいくてきれいな鳥だと思っていたカワウと人間との間にそうした切実な問題が潜んでいることを初めて知ったそうです。

(佐々木)人間が野生動物に対して、憎い感情を持っていることがすごく悲しいですね、私は。同じ地球の仲間として、仲良くはできないかもしれないけど、認めてもいいんじゃないかなと思ったんですね。そう言ってもやっぱり困ってる人は困ってるわけで、魚を食べられてしまったりだとか、大事な森を壊されて困ってる人がいるのは事実なわけで、そんな人にいきなり「カワウだって生きてるんだから殺さないでよ」って言ったって「いや、こっちも困ってるんだ」っていう話になってしまうのは容易に想像がついたというか…。 それで何かこうできる…何ができるんだろう、むしろ何が足りないんだろうっていうふうに考えた時に、今は…私にできるのは、ひとまず中立的な立場でものを見るものかなと思ったんですね。

(ナレ)そうしてカワウの研究を志した佐々木さんですが、カワウという鳥の生態については、まだまだ分からないことが多いそうです。佐々木さんは、一体どのような研究をされているのでしょうか。

(佐々木)私の研究っていうのは、あくまでもそのカワウの基礎的な情報、例えば一日どれぐらい飛ぶとか、何回潜るとかってことがそうですけど、そういうことを明らかにすることにしかならないんですよね。ただ、その私が研究したことをいずれは論文っていう形に研究をまとめた一つの冊子にするわけなんですけれども、それが色んな人に公開、不特定多数の研究をしている人だったりとか、カワウに対して何か行動をしている人の手元に届くわけですね。で、それを読んでくださった方々っていうのが、カワウと向き合う時に何か手助けになれるような研究をしようと思ってますね。

(ナレ)このようにカワウの研究を続ける佐々木さんは、子供のころから動物が大好きで、ずっと動物に関する勉強がしたかったと言います。

(佐々木)母の影響がすごく大きくって、母もすごい動物が好きで、鳥も好きで、家に常に何か動物がいるっていう状態だったし、ほんとに色んな図鑑を買い与えてくれたりとか、絵本は全部動物の絵本だよとか、そんな感じだったので、三つ子の魂百までっていうか、ほんとにちっちゃい時から好きだったみたいですね。

(ナレ)佐々木さんの家は代々金光教の信心をしています。そのため彼女は小さいころから自然と金光教の教えに触れて育ちました。

(佐々木)分かりやすいところで言うと、ご飯をすごく大事にする家庭だったというか、ご飯に対しても、米粒一つ残さないというか、元になってる命を大事にしていくことを、ほんとに自然に育ててもらう中で、教わったように思いますね。お米っていうのは、一粒一粒生きている。生きているお米を食べさせてもらっている。 すべての物は、すべての食べ物は、人の命のために神様が作ってくれたものだから、大事にしなさいと。ほんとに自然の中の物っていうのを意識しだしていたころだったので、命とか、植物とか、動物が、ほんとに尊いなっていうことを思っていたので、食卓に上がっている物も、一回は生きていたものだったので、人間のために取ってこられて、調理されて、上がってきたんだっていうのを意識した時に、すっごい大事だなと思って、現われたものは絶対粗末にしないようにしようっていうのは、すごく小さい時から、思っていたように、思いますね。

(ナレ)佐々木さんは幼いころから命の大切さや動物を愛する心を自分の中に育んでいきました。

(佐々木)人にはどうか憎まないで欲しいというか、鳥のことを、カワウたちの事を、憎まないで、同じ地球の中に生きてるものだっていうふうに、時には尊重して、寛大な心を持って、物事を考えてやるとか。とにかく憎しみだけでは何も始まらないかなあっていう、ただ殺すだけでは何も始まらないと思うんですよね。生きてる事の価値を認めてあげるというか、世の中の人が、他の鳥だけ、カワウだけじゃなくて、野生動物に対して価値を認められるような、世の中になったらいいなと、思いますね。


(ナレ)佐々木さんはカワウの研究に携わりながら、命そのものに素直な眼差しを向けています。どんな生き物も天地の中で私たちと一緒に生かされているもの同士。カワウについて話をする佐々木さんの眼差しは、とても温かく、優しさにあふれていました。

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