●共に生きる
「『おいしい』の声がききたくて」
金光教放送センター
(ナレ)大阪のある児童養護施設で働く23歳の藤井香織さんは、栄養士として、毎日50人ほどの子どもたちの食事を作っています。2歳から16歳まで、食べ盛りの子どもが多いので、いつも大忙しです。
(藤井)取りあえずお肉を炒める時がすごい大変なんです。夕食の時は、お肉の炒め物でも、4キロのお肉を使うんですよ。それを炒めるってすごい大変な作業で…。
(ナレ)児童養護施設は、家族と暮らせない子どもが共同生活をする施設です。親が病気であるとか、虐待を受けたとか、さまざまな事情があります。普段は元気にしていても、寂しい気持ちがいろいろな形で現れます。藤井さんは調理室から出ると、子どもたちと触れ合うようにしています。
(藤井)子どもたちがつらさとか、寂しさを感じる時は、もうすごい甘えてくる時です。小さい子とかは、すごい甘えてきやすい。幼児さんとかなったら、「抱っこー」とか言ってくるし、でもそれが小学生になってきたら、だんだん言われなくなってきて、中学生、高校生になったら、もう、絶対抱っこなんて言わんし。でも、小学生は、小学生なりに、構って欲しくて、ちょっと甘えた声出してみたりとか、中学生は話聞いて欲しいから、ちょっと夜遅くまで起きてみたりとか、話聞いて欲しくて、ほんまにどうでもいい話でも、「今テレビこんなんやってるで~」とか、自分に気が向いて欲しい時に、すごい話してきて、甘えてきます。甘えてくる時とか、話聞いて欲しいっていう時は、もう出来るだけ話すようにはしてます。
(ナレ)子どもたちは寂しさから不安定な気持ちになり、施設内で問題を起こすこともあります。
(藤井)子どもらがケンカした時に、暴れても注意しても、耳に入れない、子どもらが、この先生やったら大丈夫やろ。暴れても怒られへんやろみたいな感じのことをした時に、自分の力不足を感じたりします。
(ナレ)悩みがあると、藤井さんは神様に祈ります。藤井さんが神様に祈るようになったのは、昨年夏、ある体験をしたからです。岡山にある金光教本部でキャンプがあり、リーダーを務めた藤井さんの班には、元気をなくして落ち込んでいる女子高生がいました。何とか元気になってもらおうと声を掛けるのですが、彼女には響きません。
(藤井)どうすることも出来ない自分がすごい嫌やったし、なんでこんなことになってしまったんやろうみたいな感じで、涙が止まらなくなって。泣き顔で、もう涙流しながらお広前向かわせてもらって、お広前に着いたら、どわっ、て泣いとって。神様にぶつけて、お広前に座らせてもらって、ぶつけてぶつけて、どうしようって思った時に、「あ、お結界に行ったらいいんか…」ってなって、その時に初めて、自分の中で神様と向き合わせてもらったことがあったから、金光様が何をおっしゃったかは自分泣いているから、何も聞こえてないし、分からないけど、そのあと、戻って夜にその子と話したらすごいすっきりした顔をしてくれて、「あっ、話して良かったとか、あの時お結界行かせてもらって良かった」っていう…、この子がおったから自分も神様と向き合うチャンスを頂けたんやなっていうことがあって、「あっ、ていうことは、神様は私の中におったんや」っていう認識が出来て、すごいうれしくなって。
(ナレ)金光教本部にはお広前といって祈りを捧げる場所があります。その一角には“お結界”という所があり、金光教の教主である金光様がいつもおられ、お参りになった人の話を聞いて下さいます。藤井さんは心の中にある思いを全部打ち明けました。すると金光様は藤井さんの言葉をじっと受けとめ、祈ってくれました。大きな安心に包まれた藤井さんは、もう一度彼女の所に行き、話をしようと思い立ちました。
(藤井)何やろ、その時からかもしらんけど、神様は常におってくれてるって、そばにおってくれてるっていうふうに思うことが出来るようになったから、職場でも、子どもが言うこと聞いてくれへんかったりとかしたら、唱えられるようになったんやなと思います。
(ナレ)この経験から、藤井さんは職場でも心の中で神様に祈るようになったそうです。
(藤井)神様は何でも話せる存在ですね。子どもたちに願っていることは、いっぱいご飯食べて風邪引かないようにとか、丈夫な体に育ってくれればいいなというふうに願ってます。精神的な面では、自分で気持ちのコントロールが出来るようになって欲しいなって。暴れ出したら、もうどこにその気持ちを持っていったらいいか分からん子とか結構おるんで、その気持ちの持っていき方とかを年々ちょっとずつ考えていってもらっていけたらなっていうふうに、そういうふうにサポートするのって難しいから、願うことしか出来へんけど、そうなっていってくれたらなって思いますね。
(ナレ)藤井さんは、今日も子どもたちが喜んでくれるように、祈りを込めて、ご飯を作ります。今の課題は新しいメニューを増やすことだそうです。
(藤井)やっぱり新しいメニューが出てきたら、これ見たことないって言うんですよ。テンションがバッと上がるんですよね。そういう顔を見るのが楽しいからメニュー増やせたらいいなって思います。