●ラジオドラマ「ようお参りです」
第1回「幹太と雀」
金光教放送センター
登場人物
・教会の先生(30歳・男性)
・幹太(小学生)
・たみ(信奉者・女性・60歳)
・男の子1・2
・女の子1・2
(朝、雀ピイピイ。ほうきで道を掃いている)
たみ 先生、おはようございます。
先生 ああ、おはようございます。たみさん、今日もようお参りですね。
幹太 着物のおっちゃん、おはよう。
先生 やあ、幹太君おはよう。
たみ 何やの、先生におっちゃんやなんて。
幹太 せんせて、何のせんせ?
たみ ここの教会のや。
幹太 教会て? 何の教会?
たみ 金光教や。
幹太 こんこう…? へー、そんなん知らんわ。なあおっちゃん。
先生 何や?
幹太 ここの庭広いし、学校終わったらキャッチボールしてもええか?
先生 はは、ええよ。
幹太 えへへ。
たみ 幹太、はよ学校に行かんと遅れるよー。
幹太 はーい。八百屋のおばあちゃんはうるさいなあ。行ってきまーす。
(幹太、駆け出す)
先生 可愛い子ですな。
たみ 先生お若いのに、オッチャンやなんて言うて。
先生 ははは、小学生から見たら、30の僕なんか十分にオッチャンですよ。
たみ こんな寂しい不便な所に先生に来ていただいて、有り難いことですわ。
先生 ここは空気はええし、水もおいしいし、自然がいっぱいでええとこですわ。自転車で20分も走ったらスーパーがありますからな。そうや、子どもらに何か買うて来ますわ。
たみ まあまあ。
(キャッチボールをしている)
男の子1 いくで。
幹太 よっしゃ。
男の子1 もういっちょ。
幹太 おい、どこ向いて投げてるんや、ちゃんと放れ。
男の子1 投げてるやないか。お前がちゃんと受けんのや。
男の子2 もうー、下手くそやなあ、はよ代わろうや。
女の子1 ほな、鬼ごっこしよう。ジャンケンポン!
女の子2 わーい、キミちゃんが鬼や。
(他の子の喚声)
女の子1 1・2・3・4・5…。
(ガラガラ、戸が開いて)
たみ まあまあ、えらいにぎやかなことですなあ。(間)あ、先生何してはりますの?
先生 ここに来られるお子さんたちの名前を書いて、病気やけがをせんように、お祈りするんです。
たみ ほな、私も一緒にお祈りさせてもらいますわ。
(少しの間)
女の子2 危ない!!
男の子1 おっちゃーん!!
先生 どないしたんや!
男の子2 ボールが塀の向こうに行ってしもて、幹太が塀をよじ登ったんやけど、塀高いし、下りられんようになって…。
女の子2 下に大きな石あるし、落ちたらけがする!
先生 幹太、大丈夫か!(間)幹太、手え放したらあかんぞ。ほんでな、おっちゃんの肩に足を載せるんや。そやそやそやそや、それから肩車や。そーっと、そーっとやで。
男の子1 おっちゃんこけたら危ない。僕らで支えよな。
男の子2 うん。
女の子1・2 うちらも。
先生 よっしゃ。もう降りても大丈夫や。
幹太 フーッ、おっちゃん、あ、先生ありがとう。
女の子1 もうー、ひやひやしたわ。
先生 ははは。みんな、中に入ってお菓子食べへんか?
子どもたち わあー。
(紙袋を開けるなどの音)
子どもたち いただきまーす。
(食べている雰囲気。おせんべいバリッ!)
幹太 あ! 歯抜けた、どないしょう……。
先生 おお、そうか…。そやなぁ、今までお世話になった歯にお礼を言うて、人が踏まん木の下に埋めたらどうや?
幹太 うん、僕、神様のとこでお礼言うて、庭に埋めてくるわ。
(鳥の鳴き声など、のどかな雰囲気)
たみ こんにちは。まあ、ぎょうさんの野菜ですなぁ。
先生 はは、これ、幹太君のお母さんから、お礼や言うて頂きました。
幹太 (飛び込んで来る)先生!
たみ また、あんたか。
先生 どないしたんや?
幹太 この網の中に雀が…。
たみ あんた、魚取りの網で雀取ったんか?
幹太 違うねん、振り回して歩いてたら雀が入ってしもて、どうしても逃げへんのや。逃がすの手伝うて。
(雀の鳴く声。羽ばたく音)
幹太 可哀想に鳴いてるやろ。死んでしもたらどないしょう。
先生 よし、幹太君、網の入り口しっかり開けて。
幹太 うん。
先生 たみさんもこっち引っ張って下さいな。
たみ ええ。ああ、あかんて。もつれてしまう。難儀やなー。
幹太 ああ、羽が網に絡まってしもた!
先生 幹太君、はさみで網の糸を切ろう。
幹太 あかん! これ友達に借りた網やから切ったらあかん!
たみ そんなこと言うたかて。
幹太 僕、神様にお願いしてくるから。
たみ へえー! 幹太が…?
先生 ああ、網が絡まって、余計ににっちもさっちも行かんようになったわ。
たみ ああ、可哀想に。雀、もがいてますなぁ、あ痛っ!
先生 え?
たみ くちばしで突かれました。
先生 幹太君、やっぱりはさみで網を切ろう。羽が取れたら可哀想や、ええやろ。はさみ取ってくるさかいな。
幹太 (困った…)ええー…うーん…。
たみ それが一番や、雀も可哀想や。
(やや・間)
幹太 あれー。
たみ どないした?
幹太 いじってたらはずれた。僕の手の上見て。
先生 幹太君、はさみ持ってきた……。お、雀、出たんか?
幹太 うん、何やするっとはずれた。可愛いやろ。お前、ちゃんと飛べるか?
(窓を開ける音)
幹太 ほーら、飛んでおかえりー。
(雀 チイチイ)
先生 良かったなあ。
たみ ほんまに。
先生 幹太君の真心が、雀を助けたようなもんや。
幹太 えへへ、おーい雀、元気でなー!