シリーズ「天地は語る」 「その時は都合が悪くても」


●天地は語る
「その時は都合が悪くても」

金光教放送センター


(ナレ)「信心していれば、その時は都合が悪いようでも、神の仰せにそむかないでいると、後になってから、あれもおかげであった、これもおかげであったということがわかってくる。これがわかるくらいの信心をしなければ、信心するかいがない」  
 これは、金光教の教祖、金光大神の教えの一つです。今日は、この教えについてのお話です。          

(聞き手)先生、こんにちは。
(先 生)こんにちは。
(聞き手)今日は、この教えについてお話を聞かせて下さい。信心していても良いことばかりではなく、都合が悪いことも起きてくるんですね。
(先 生)そうですよ。でも、その都合が悪いことが、信心していればおかげになってきます。神様は、人の身の上に決して無駄事はなされませんから。信心していると、そのことがよく分かるようになりますよ。
(聞き手)そうなんですか。
(先 生)今から40年近く前のことですが、チエさんという方の体験を通してお話しますね。チエさんの一人娘、清子きよこちゃんはとても優秀で、国立の大学を目指していました。高校の先生も、清子ちゃんなら大丈夫と太鼓判を押すほどでした。ところが落ちてしまいました。本人はもとより、お母さんのチエさんは驚くやら、がっかりするやらで。
(聞き手)それは残念でしたね。
(先 生)チエさんは教会に来て、「娘は、あれほど本気で勉強し、しかも神様にお願いして信心にも励んだのに、落ちてしまいました。どうしてでしょうか」と訴えました。
(聞き手)それで先生はどんな言葉を掛けたんですか。
(先 生)「ええっ、清子ちゃん落ちたって! うーん、神様は清子ちゃんの使いどころをどう考えておられるんだろうかなあ」と。
(聞き手)ええっ? 神さまが清子さんの使いどころを…ですか。へー。それはどういうことなんでしょうか?
(先 生)信心とはね、心を神様に向けることなんです。何か困ったことが起きたり、判断に迷うような時、神様はこのことを通して、私に何を望んでおられるんだろうかと、じっくりと問い掛けてみるんです。そして、神様が良いようにしてくださるに違いないと信じて、思うようにならないこともじっと辛抱することが大切なのですよ。
(聞き手)ふうん。それで、清子さんはどうされたんですか。
(先 生)一年、浪人しました。最初は、学校の先生になろうと思って教育学部を受験したのですが、浪人生活を送るうちにドイツ語に興味を持つようになりました。そして目指した大学に合格し、ドイツ語を専攻して学んでいるうちに、本場のドイツでもっと勉強したいと言い出しました。向上心の旺盛な娘さんでね。
(聞き手)ご家族は賛成されたんですか?
(先 生)いやいや。それはもうびっくりしてねぇ。今でこそ、海外へ出る女性はたくさんいますが、その当時、女の子が留学するなんてもっての他でしたからね。
(聞き手)でも、反対されても簡単には諦められませんよね。
(先 生)そう。それでチエさんは教会に来て、そのことを話しました。
(聞き手)自分の思いだけで反対しても駄目だと思ったんでしょうね。それで先生は何と言われたんですか。
(先 生)「ドイツにねえ。神様は、清子ちゃんをドイツでどう使おうとされるんじゃろうねえ」と。
(聞き手)ええー、それはどういうことなんですか?
(先 生)ドイツに行くことに賛成とか反対とかではなく、ただ神様がどのようになさろうとしているのかを、チエさんと一緒に求めようとしたんです。親としては、ドイツに行って欲しくありませんが、娘の願いの強さに負けて、チエさんはとうとう留学を認めたんです。この時も、神様が良いようにして下さると信じて、黙って娘を送り出しました。
(聞き手)それで清子さんは、ドイツに行くことができたんですね。
(先 生)ええ。ドイツでは実業家の家に住み込み、家事やベビーシッターをしながら、それは一生懸命に勉強しました。そしてそのうちに、大変日本びいきのドイツ人男性と巡り会い、ひかれあって結婚することになりました。
(聞き手)わあ、またチエさんは、びっくりされたでしょうね。
(先 生)それはもうね。ドイツに行くことにも反対だったのに、ましてやドイツの人と結婚するなど、天地がひっくり返るほどの驚きでしたよ。
(聞き手)それでチエさんは、教会に来て先生に訴えるんですね。それで先生は何と言ったんですか?
(先 生)「あのねぇ、ドイツの人といっても神様の氏子には変わりないもんねえ」と言いました。その言葉を聞いて、「あぁ、そうだったなぁ」と、チエさんは思い直されたようですよ。チエさんの心の中に、神様の目で物事を捉えていく信心が育ってきていたんです。
(聞き手)良かったですね。それで清子さんはその後どうなったんですか。
(先 生)はい。通訳や翻訳の仕事をしてきました。また、ご主人と一緒に度々日本の実家にも帰って来ていて、チエさんも、ご主人のお人柄に触れて、すっかりお気に入りのようです。そして今では、金光教の教典などの翻訳にも取り組んでいます。同時にドイツの人々が助かっていくために、自分を使っていただきたいという大きな願いを持って、いろいろな取り組みをしています。
(聞き手)ああ、清子さんはドイツでそのように活躍されているんですね。大学受験に失敗したことは、清子さんの新しい願いが生まれてくる大きな転機となったんですね。
(先 生)はい。またチエさんが何かあると、まず教会に来て話を聞き、神様の願いはどこにあるのだろうかと求めていかれたんです。その姿勢が大切なんです。
(聞き手)そうですね。よく分かりました。先生、今日はありがとうございました。
(先 生)ありがとうございました。

(ナレ)「信心していれば、その時は都合が悪いようでも、神の仰せにそむかないでいると、後になってから、あれもおかげであった、これもおかげであったということがわかってくる。これがわかるくらいの信心をしなければ、信心するかいがない」
 今日は、この教えについてのお話でした。

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