●信者さんのおはなし
「人と人とをつなぐ仕事」
金光教放送センター
(ナレ)福岡県の病院に勤める八木睦未さんは現在28歳。医療ソーシャルワーカーとして忙しい毎日を過ごしています。
「医療ソーシャルワーカー」。あまり聞き慣れない名前ですが、どのような仕事なのでしょうか?
(八木)簡単に一言で言えば生活全般の相談役、年金のこととか、制度の説明はもちろんしますし、手続きの方法とか、後は身内がいらっしゃらない方に関しては、公的な部分ではないんですけど、入院中は、後見人みたいな形でお金の管理をすることもあるし、後は身内、身寄りのない方とか、ホームレスの状態で運ばれてきた方とかであれば、まず身元を探ることから始めないといけないので、警察に行ったりとか、役所に行ったりとか、お家で大家さんを訪ねたりとか、そういうことまで始めるので、ここからここまでがワーカーの仕事っていうのが特に決まってないんですよね。
(ナレ)「困ってる方の相談役です」と言う八木さん。仕事の内容は、多岐に渡りますが、全てのことを八木さんが一人で担うということではないのです。
(八木)例えばケアマネージャーさんだったらケアマネージャーさんを紹介して、一緒にまた考えてくれる人をどんどん増やしていくっていう感じですね。
医療面に関しては、退院した後、どういうことをしないといけないですか? って聞くのは先生ですし、入院中の生活の状況を聞くのは看護士さんが一番やっぱり分かってることですし、後は、動きですね。身体がどれくらい動くのかっていうのを一番分かってるのはリハビリの担当の方ですし、だから、一人だけでは進められないので、病院の中でも、病院の外でも、その方に関わってる方を、どんどんつないで一緒に話し合っていくっていう、立場的には病院の中ではそんな感じの仕事ですね。
(ナレ)時には、患者さんと、ご家族の間に入って、疎遠になってしまっている家族関係の修復もお手伝いします。
(八木)結構、病気っていい機会だと思うんですよね。今まで、誕生日とか、節目節目で、連絡を取る機会はあったとしても、なかなかそれぐらいじゃ取らないと思うんですけど。病気になったって言ったら、やっぱり少なからず心配する気持ちっていうのは、どれだけ離れててもあると思うので。病気って、ほんとに良い機会で、家族同士が、やっぱりまたつながれる機会にはなってると思うので。それをきっかけに、私なり、専門のスタッフが、間に入って、直接話がしにくいんであれば、間に入ることで話せることっていうのもあると思うので、それがつなぎ目になるんであれば一番ありがたいことだし。それで家族が再生して、うまくいってる例もあるし。
(ナレ)就職して間もないころ、一人暮らしで社会から孤立してしまった方が、病院へ運び込まれ、八木さんが、この方を担当することになりました。やがて、ケアマネージャーや、ヘルパーの方、お医者さんや看護士さんなどとの関わりの中で、孤独だったこの方に、人と人とのつながりが生まれました。
(八木)退院される時に患者さんから、「倒れて良かった。ありがとう」って言ってもらったのが一番嬉しくて。
本来、倒れるっていうことは、病気になるっていうことは、苦しいことなんですけど、その苦しいことをきっかけに、もう一個、次の段階に行くことが出来たっていうことで、私が役に立てたっていうのも、もちろん嬉しかったし。一人、また社会に戻ってつながってくれる方が出来たっていうことで、それが一番、今も、ずーっと残ってて、初心を忘れないように、「ありがとう」って言われる度に、それを思い出しますね。
(ナレ)患者さんの喜ぶ顔に元気をもらい、毎日の仕事に励む八木さんですが、仕事をしていく上で、大切にしていることがあります。
それは、普段お参りしている教会の先生から教えてもらった「ある言葉」です。
(八木)教会長先生からですね。「人はみな神の氏子」っていう言葉を頂いて。人はみんな神様の子なんだから誰でも同じ。どうしても、相談を聞く側なので、「してあげる」「してもらう」っていう関係になってしまいがちなんですけど、それは意識的にですね、たまたま私が専門の分野で福祉のお仕事、制度のこととか、それにたまたま詳しいだけだし、今までの仕事の中で、相談を1件するにつれて、私がもっと成長させてもらってるなっていうのが、一番あるので。私は一方的にしてあげるわけではなくて、逆に患者さんからしてもらってることが一番あるしってのがあります。これからも、私も得意な分野では、もちろんお役に立たせてもらうし、患者さんからも成長させていただいてるっていう立場で、それを大事にしていこうかなと思ってます。
(ナレ)患者さんのお世話をする八木さんですが、逆に、患者さんから教えてもらい、成長させてもらっていると笑顔で語ります。
多くの人に支えられて仕事をする八木さんの中に、ある思いが強くなってきました。
(八木)今までは、こう、やっぱり、してもらう、助けられることが多かったので、今後は、「この人に頼めば大丈夫だよ」っていうような、私も助ける一部になっていきたいですよね。役に立ちたい。お役に立てるように、仕事もそうだし、生活もしていきたい。自分が、与えられた部分を返したいってのが一番大きいかも知れないですね。
(ナレ)患者さんと家族、お医者さんやヘルパーさんなど、多くの人と人をつないでいくことが医療ソーシャルワーカーの仕事。
八木さんの周りには、今日もつながりあった人々の笑顔があふれています。