●信者さんのおはなし
「笑顔で」
金光教放送センター
普段、何気ない日常生活を送っていて、「突然、どうしてこんなことが起きてくるのだろう」と感じるような時はないでしょうか…。予想もしないことに出合った時、人は戸惑い、現実を受け入れられないこともあります。
秋田県大曲教会に参拝する、47歳の山藤順子さんは素朴で親しみやすい人です。ご自分が体験された出来事を次のように話してくれました。
「私には子どもが2人いまして、養護学校に通う中学1年生の女の子と、小学校6年生の男の子です。初めての出産の時のことです。結婚して7年目にやっと妊娠し、経過は順調でした。ところが予定日の1週間前に、お腹が痛くなり破水し、突発性の早期胎盤剥離によって、大出血を起こしました。意識がなくなり生死をさまよったんです…。お医者さんには、母子共に命が危ないと言われましたが、金光教の信心をする母と、教会の先生の懸命なお祈りもあって、10時間後に奇跡的に意識が回復し、子どもの命も助かりました。幸い、入った時が朝の時間帯でしたので、婦人科も小児科も、お医者さんが揃っていて、手を尽くして下さいました。後で聞いたのですが、私を助けようと、患者さん方が並んで、1600ccの輸血をして下さったんだそうです。
歩けるようになり2日目、初めて赤ちゃんと対面しました。管をたくさん付けられて保育器に入っていましたが、自分が出産したという感覚が全くなかったので、『この子ですよ』と言われても、『え? そうなの?』という不思議な気持ちでした…。お医者さんには、『反射的なものは備わっていますが、体の発達が遅れています。経過を診ましょう』と言われました。その後、地元の療育センターを紹介され、そこで初めて、娘・有貴の病名が分かり、脳性マヒと告げられました。あまりのショックに思わず出た言葉が、『治りますか!?』でした。しかし、お医者さんの『治りません…でも訓練によって変わってきます』という言葉に呆然とし、頭が真っ白になりました…。
療育センターから、『3週間後に部屋が空きますので、まず、1カ月半、お子さんといっしょに入院をして下さい』と言われました。でも、私は、『そんなことして何になるんだろう? 家なら主人に手伝ってもらえるのに…』と、あまり気持ちが進みませんでした。入院までの3週間、毎日何を考えて、どう過ごしていたのか全然覚えていないんです…。とにかく、真っ白でした。そんな状態での入院となりましたが、実はそこでの経験が、私の気持ちを変えるきっかけとなりました。
私がまずビックリしたのは、お母さん方がみんな、とっても明るいんです! 有貴より重症の子どもさんを持つお母さんも居るのに、みんな笑ってるんです!! お医者さんも看護師さんも…。私一人が暗い顔してて、『何でこうなんだろう』と思いました。これまで、『なぜ? なぜ?』と責めることしか出来なかったんですが、私だけじゃなかったんだと気付きました。目の前に光が差すのを感じました。『下を向いていても何にも変わらない。前を向こう。そうしていたら、みんな声を掛けてくれる』そんなふうに思いました。
私は、金光教の信心をする母の背中を見て育ちました。母から、『学校や仕事に行く前、必ず、神棚に手を合わせてから行きなさいね。守っていただけるから』と教えられました。それをするのが私の日課であり、一日の始まりでした。お嫁に行くと少し意識は薄れましたが、母はずっと教会にお参りして、私たち家族のことを祈ってくれていました。私も、子どもを授かって初めて、親の思いというのが分かりました。今では毎週、大曲教会に子どもを連れてお参りさせてもらってます。有貴は、教会の先生の顔を見ると、ニコニコ笑うんです」。
「教会では、自分の胸のうちを何でも聞いていただいています。先生のお話で気付かされることもありまして、スッキリした気持ちで帰れるんです。でも、2人目の大貴を身ごもった時は、ずいぶん葛藤しました。ちゃんと生まれてきてくれるのかな…。もし出産の時、子どもを残して、私が先に逝ってしまったらどうしよう…。2人も育てていけるのかな? 心配する気持ちを正直に教会の先生に伝えました。すがるような思いでした。先生は、『大丈夫。お祈りしていますからね。有貴ちゃんには姉弟が必要です』と言ってくださいました。先輩のお母さんには、『うちでは下の子どもが助けてくれるよ』と励まして頂きました。みんなの思いが込められて、大貴が生まれました。初めて自分の耳で、赤ちゃんの産声を聞きました。骨盤が狭く帝王切開でしたが、陣痛も実感出来ました。主人は大貴が生まれてから、いっそう協力してくれるようになりました。大貴が、『ただいまー』と学校から帰ると、有貴がうれしそうに声を出して笑うんです。弟のことが大好きみたいです。大貴は家に、友達もよく連れて来るんですが、『お姉ちゃんは養護学校に行ってて、車椅子に乗っているんだよ』とオープンに話しています。大貴の存在は、有貴にとって刺激になっています。有貴の可能性を摘んでしまわないよう、毎日のリハビリも頑張っています。今までで一番うれしかったことは、ストローで飲めた時かな…」
順子さんはしみじみと、「神様って目には見えませんが、いらっしゃるんだなーと思います。神様のお力で生かされて、私たち親子は成長させていているように思います」と飾らない笑顔で話されます。たくさんの人に支えられながら、前向きに生きる順子さんでした。