シリーズ「天地は語る」第3回「先を楽しむこと」


●シリーズ「天地は語る」 
第3回「先を楽しむこと」

金光教放送センター


(ナ レ) 金光教の教祖である、金光大神こんこうだいじんの教えに、次のようなものがあります。
 「悪いことを言って待つなよ。さきを楽しめ」
 今日はこの教えについてのお話です。

(聞き手) 先生こんにちは。
(先 生) はい、こんにちは。
(聞き手) 先生は普段生活していて、困ったなとか、大変だなと思うことが起きた時、いつもと同じように過ごせますか?
(先 生) いやー、顔には出しませんが、心の中は落ち着かないですね。
(聞き手) そうですよね…。そういう時って、戸惑ったり、心配な気持ちになりますよね。
(先 生) はい。大丈夫と思っていても、ついつい悪い方に考えることもあります。物事をいつも良い方に取れたらいいのですが、なかなかそうもいかないのが私たちじゃないでしょうか。でもね、今日の、「悪いことを言って待つなよ。先を楽しめ」という教えから思い出す話があるんです。
(聞き手) はい、聞かせて下さい。
(先 生) 私の教会ではね、お正月に、金光教の教祖様の教えを書いたものを、おみくじみたいに引いてもらうんですね。
(聞き手) はい。
(先 生) それで、毎年家族でお参りされる信者さんがいるんですが、ご夫婦、息子さん、娘さん、それぞれに引いてもらいました。
(聞き手) はい。
(先 生) 息子さんは、大学受験を控えてました。頑張って勉強していましたが、段々と日にちが近付いてきて、不安な様子でした。そんな中、たまたま引いたのが、今日の教えの、「悪いことを言って待つなよ。先を楽しめ」だったんです。
(聞き手) ふーん。
(先 生) 息子さんが言うには、このごろ、受験会場にいる自分の姿を想像しただけで、気分が悪くなってたようです。周りが気になって、力が出なかったらどうしようとか、その日、熱を出したらどうしようとか、落ちるんじゃないかとか、そんなことばかり考えていたそうです。でも、「悪いことを言って待つなよ。先を楽しめ」と言われ、「そうや。ずっと頑張ってきたんやし、大丈夫。ごちゃごちゃ考えるのはやめよう」と、息子さんは気持ちがスッキリしたそうです。
(聞き手) へえー、それで、当日どうだったんですか?
(先 生) ええ。不思議と、心が落ち着き、普段と変わらない状態で受験が出来たんだそうです。
(聞き手) そうですかー。じゃあ、結果の方は…?
(先 生) はい。合格でした。
(聞き手) 良かったですねえ。息子さんは喜ばれたでしょうね。
(先 生) はい! そして、その2年後、次は娘さんの高校受験でした。
(聞き手) はい。
(先 生) それで、彼女が引いた教えも、「悪いことを言って待つなよ」だったんです!
(聞き手) えー? まさか、同じ教えばかり入っているんじゃないですかー?
(先 生) いえいえ。それはないですよ。娘さんは偶然その教えを引いたんです。
(聞き手) じゃ、合格されたんですね。
(先 生) いや、それが不合格だったんです。
(聞き手) え? お兄ちゃんのようにはいかなかったんですね。
(先 生) 確かに、結果だけを聞くと、そう思ってしまいますよね。だけども、合格はおかげ、不合格はおかげがなかったと、言えますでしょうか? …あ、「おかげ」という意味分かります?
(聞き手) あー、「おかげさまで」という言い方はしますから…。ま、お話の流れからしますと、御利益みたいなことですか?
(先 生) そうですね。もう少し広げた解釈もありますが、ここでは、そんなふうに思っといて下さい。
(聞き手) 娘さんは、ショックだったんじゃないですか?
(先 生) はい…。その公立高校は、自分の実力では、五分五分かなと話してたんですが、親御さんも毎日お祈りされてましたし、ちょっとは期待もしていたようです。
(聞き手) お兄ちゃんと同じ、教えも引きましたしね。
(先 生) そうですね。しばらくはつらくて、娘さんは教会に来れず、お母さんだけが参拝されました。私もね、悔しいなという気持ちでしたが、お母さんにこう言いました。「娘さん、よく頑張ってこられましたね。お母さんも色々と気を遣われたんじゃないですか」。
 すると、お母さんはこうおっしゃったんですね。「いえいえ、私はただ、娘のことを見守るだけでした。でも、これもおかげだったと思える日が必ず来ると思います。体調にはずいぶん気を遣いましたから、無事に受験が出来て良かったです」と、言われました。
 実はね、入試の一週間前、娘さん、突然具合が悪くなったんです。お母さんは、何かいけないものを食べさせたのかなーって、ヒヤヒヤしたそうですよ。
(聞き手) へえー、入試の間際に大変だったんですねー。
(先 生) はい。熱も出てきて風邪のようでした。普段元気な娘さんでしたが、その時ばかりは、「もうあかん…。当日までに病気が治らないかもしれん。今まで勉強してきたのに…」って弱音を吐いていたようです。その時、お母さんは、ふと、お正月に引いた、教祖様の教えを思い出して、こんなふうにおっしゃったんだそうです。「もう悪いことを言うのはやめよ。絶対に治るって。受験の前の日じゃなくて良かった」。娘さんは、その言葉にホッとし、安心して眠ることが出来て、早く回復されたんですよ。そして無事に受験が出来たんですね。
(聞き手) そうだったんですか。
(先 生) ええ。結局は、先に受かっていた私立高校に行くことになったんですけどもね。新学期が始まって、一月経ったころ、娘さんは教会に来て、うれしそうにこう言ってたんです。「出会った友達が、私と気の合う人ばかりで。クラスの雰囲気もすごくまとまってて、この学校に来て良かった」って。私もうれしかったですね。
(聞き手) そうなんですか。今日の教えの通りになったんですね。たとえ思い通りにならなくても、先を楽しみにすればいいんですね。先生、どうも、ありがとうございました。
(先 生) はい、ありがとうございました。

(ナ レ) 今日は、「悪いことを言って待つなよ。先を楽しめ」という教えについてのお話でした

タイトルとURLをコピーしました