●ラジオドラマ「こんにちは、金光さま」
第6回「病気見舞い」
金光教放送センター
登場人物
・五兵衛 40代
・宗助 40代
・よね(五兵衛の妻)30代
・教祖
五兵衛 宗助、暑いのに精が出るなあ。
宗助 やあ五兵衛、見てくれよ、この畑のナスの色…。
五兵衛 ほおー、紫色につやつやした立派なナスだ。俺んとこのきゅうりも立派に育ったよ。
宗助 今年は豊作だなあ。
五兵衛 ああ、お互い、暑い中働いたおかげだ。俺も精出して、もうひと頑張りするか。
(ピイピイ鳥のさえずり)
五兵衛 宗助、そろそろ昼飯にでもするか。…宗助! …おい、宗助、宗助どうしたんだい。
宗助 腹が…痛い…。
五兵衛 食当りかよ。おーい、誰かいねえかー、おーい。…よし、俺の背中につかまれ! おまえの家まで負ぶってってやる。
よね それでお前さん、どうしたんだい?
五兵衛 宗助のおかみさんうろたえてるもんだからよ、俺が玄庵先生呼びに行った。
よね 先生何て?
五兵衛 癪だと。
よね 癪?
五兵衛 腹が痛いって、かなり苦しんでたからな。
よね 心配だねえ。
五兵衛 ああ。
よね 見舞いに行ってこようか?
五兵衛 今日はやめとけ。俺はあした、金光様の所に行って、宗助が助かるように、お願いしてくる。
よね 神様が病気を助けて下さるかねえ、それは玄庵先生の役目だろう。
五兵衛 俺が神様に祈ってるって分かったら、宗助だって心強いだろう。
よね でも、病人の顔を見てやらないのは薄情じゃないかねえ。
五兵衛 薄情って…、そんなことがあるものか。具合の悪い時に見舞いに押しかけられたら、病人だってかえってしんどいだろうよ。
よね あんたの幼なじみじゃないか、心配じゃないのかい? 私はあしたにでも行ってみるよ。
五兵衛 勝手にしろ。宗助の顔見たら、すぐに帰って来るんだぞ。
(板戸の開け閉め)
五兵衛 おーい、帰ったぞ。
よね 暑いのにご苦労さんだったね。それで金光さんにちゃんとお願いして来てくれたのかい?
五兵衛 おう、いろいろお話を聞いてきた。それで、宗助どんな具合だった?
よね ぐったりして寝ていたよ。「まあー顔色悪いねえ、可哀想に」って、言ってあげた。
五兵衛 何てこと言うんだい!
よね だって可哀想じゃないか。「災難だったねえ、ついてないねえ、おかみさんにも苦労掛けるねえ…」
五兵衛 おまえのおしゃべりの口がべらべら動いたんだろうなあ…。さぞ病人だって、おちおち寝てられなかったことだろうよ。
よね だって、おかみさんも看病で疲れてるだろうと思ってさ、私がそばに付いててあげるよって言ったんだよ。
五兵衛 すぐに帰れって言っただろうが。
よね そうしたらおかみさん、畑が心配だって畑を見に行っちまった、なかなか帰って来ないんだよ。せっかくおかみさんを休ませてあげようと思ってそう言ったのにさ。
五兵衛 おまえが宗助に言った事は全部間違ってる。
よね 何でだい?
五兵衛 病人に、「可哀想とか、顔色悪いとか、災難」なんて言うもんじゃない。
よね だって、そのとおりだったんだよ。
五兵衛 そうかもしれないけど、それは見舞いに行って見舞いになってない。
よね 何で?
五兵衛 病の宗助の身にもなってみろ、そんなこと言われたら、余計落ち込んで、これは治らない、重い病だと思うだろ。
よね まあー、そうかも知れないけどね…。じゃあどうすればいいんだい?
五兵衛 俺は金光様の所に行って、「宗助の病が早く良くなりますように…」と、お祈りした。金光様はこうおっしゃった。
教祖の声 見舞いの言いようで、病人の気分が強くもなり弱くもなる。せっかく見舞いに行く親切があるなら、病人の心が丈夫になるような見舞いの言葉を言ってあげるといいのです。病人が全快するような言葉を言うのですよ。そして悪いことを言わず、心配をしないように話す。病が治ることを祈っていると話す。
よね そういうもんかねえ。
五兵衛 そうだよ、またこうもおっしゃった。
教祖の声 病人の家の人には、なるたけの手伝いをしてあげなさい。助ける道は色々ありますから。
五兵衛 おまえは宗助のおかみさんを助けてやったらいいんだよ。
よね え? …ああ、ご飯のおかずを作って持って行ってあげるとか?
五兵衛 そうだよ。
よね おかみさん、畑と病人で手いっぱいだもんねえ。
五兵衛 …そうだ、俺も明日から宗助の畑の作物の取り入れを手伝ってやることにしよう。おまえも手の空いてる時に宗助の畑の手伝いをしに来いよ。
よね 家の畑はどうするのさ?
五兵衛 俺が2倍働く、子どもたちにも畑に来るように言ってくれ。
よね 三郎なんて、まだほんの子どもだよ。
五兵衛 子どもだって、草取りくらいは出来るだろ。
よね そうだねえ、そうするよ。
五兵衛 宗助のおかみさんには、家で宗助の看病をするように言うんだぞ。畑のことは一切心配ないって言うんだ。
(鳥のさえずり)
五兵衛 今日もいい天気だ、ひと頑張りするか。…あれ、宗助だ、おーい、病は良くなったのかい。
宗助 色々世話になったな、ありがとうよ。いやあ、実は昨日ちょうど玄庵先生が来てた時だ。小便がしたくなった、まあその時の痛さといったらなかったよ。
五兵衛 ほうー…。
宗助 小便と一緒に石が出た。
五兵衛 え、石が腹の中から出たのか?
宗助 ああ、玄庵先生はな、これでもう良くなったと言ってくれたよ。
五兵衛 それは良かったなあ。
宗助 俺は金が入るより、石が出た方がよっぽどうれしかったよ。
五兵衛 ハハハ…。お天道様のもとでコツコツ働いてたら、お互い暮らしていけるものなあ…。ハハハ!