ホームステイ


●先生のおはなし
「ホームステイ」

金光教赤羽あかばね教会
藤原真美ふじわらまさみ 先生


 数年前、私は英語の語学研修のため、1カ月間オーストラリアのシドニー市に滞在し、ホームステイしながら、朝から夕方まで学校に通っていました。
 ホームステイ先のお宅は、シドニー駅から、およそ電車で15分のところにあります。ここの駅は、乗り降りする乗客も少なく、周りも閑散としていて、にぎやかなシドニー駅周辺とはまるで様子が違いました。
 お宅は駅から歩いて2、3分程と聞いていましたので、地図を頼りに改札口からすぐにある道を進んでいきました。しかし、歩いても歩いても、シャッターの閉まった店や廃墟寸前の建物ばかりで、民家らしき建物が見えてきません。「きちんと左右を確認しながら歩いてきたので、見逃しているはずはないのだけれど…」。
 あれからどれくらい歩いたでしょうか。「いくら何でもこれだけ探して見つからないのはおかしい。もしかしたら逆方向だったかもしれないな」。そう思い焦りながら、今度は来た道を引き返し、反対方向へ向かいました。これで駅前を通過して、少し歩いたら着くと思っていましたが、これまたなかなか見つかりません。駅から離れると通りはどんどん寂しくなっていきました。通行人も全くいなかったので、通り掛かりの人に尋ねてみようにも出来ません。私は神様に「どうか私をステイ先の家まで連れて行って下さい」と、何度もお願いしながら、重たいスーツケースを引いて通りを何度も往復しました。
 気が付くと、夕暮れ近くになっていました。すると、駅からだいぶ離れたところにようやくガソリンスタンドを発見しました。
 私は「神様、尋ねる人に出会いました。ありがとうございます」とお礼申し上げ、ガソリンスタンドの従業員に地図とメモしてあった住所を見せて「ここに行くにはどう行けばいいですか」と聞きました。すると、従業員はしばらく考えながら「うーん分からないですね」と答えました。私は「もしかしたら私の下手な英語が伝わっていないのかもしれない」と思い、何度も聞き返しましたが「ごめんなさい、この場所は分かりません」という言葉しか返ってきませんでした。私はがっかりしてまた歩き始めました。
 しばらくして、ありがたいことに別のガソリンスタンドが見つかり、そこでも尋ねてみました。すると「この住所は今は無いよ」という驚きの言葉が返ってきました。仕方なくスタート地点の駅まで戻り、公衆電話があったので、勇気を出してステイ先に電話してみましたが、誰も出ませんでした。「海外の初めての地でこんなことになるなんて…」。
 日暮れも近くなり、私は焦りと不安で力尽きて途方に暮れました。「もしこのまま見つからなかったら、ホテルに1カ月泊まるしかないだろうか」。こんなことまで考えていました。 
 このままでいるわけにはいかず、私は最後の力を振り絞り「神様、暗くなる前にもう少し歩いてみます。どうか、お宅まで導いて下さい。お願いします!」と、半分泣きながら必死にお願いしつつ、しばらく周辺を歩きました。すると路地が見えてきたので、ひょいと入ってみると、古い工場の跡のような建物が並んでおり、その一角に民家を発見しました。
 近付いてみると、庭先で男性が洗車をしていたのです。私は、すがる思いでその男性に住所を見せて尋ねました。男性は「ちょっと待っててね、妻に聞いてみる」と家の中にいるご夫人を呼び出しました。出てきたご夫人はなんと日本人でした。「助かったー!」と思わず心の中で叫びました。住所を見せると「この住所は不完全で、番地の続きがあるんじゃないかしら」と言われ、別のノートにもメモしてあったことを思い出し、急いで確かめてみると、最後の数字が漏れていたことが分かりました。ご夫人はその住所を見て「あら、ここの近くよ。良かったら車で送ってあげるわ」とステイ先の家まで送って下さったのです。
 目的の家にようやく着いたのは、日が暮れる寸前でした。ステイ先の奥様が「なかなか来ないから心配したのよ」と優しく迎えて下さり、その瞬間にホッとして今にも腰が抜けそうになりました。私は送って下さったご夫人にお礼を言い、その場で別れました。
 後で分かったことですが、オーストラリアでは節水のため、法律で水まきや洗車の時間が決まっており、ちょうど私が通り掛かった時間でなければ、庭にご主人はおられなかったとのことでした。諦めずに神様にお願いしたおかげで、時間のお繰り合わせを頂き、この民家に、そしてご夫婦のもとに神様がお導き下さったとしか思えません。そして、自分のミスによる詰めの甘さを反省し、神様にお詫びもしました。
 その後、私は無事に1カ月の研修を終え、帰国しました。この出来事について、「運が良かった」「偶然そうなった」と思う方もいるかもしれませんが、私は「精いっぱい神様に願うことで、私たち氏子を救い助けたいと思って下さっている神様が、その願いをお聞き取り下さり、助けて下さったのだ」と思っています。そして、私たちは神様のおかげを受けているからこそ、生きていられるのだと改めて思わされました。
 私のホームステイは神様のお守りの中で無事に終えることができました。

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