●信者さんのおはなし
「失敗もOK、何でもOK」
金光教放送センター
山口和代さんは、福岡市にある金光教の教会で、6人兄妹の次女として生まれました。大学を卒業後、航空会社に勤め、結婚を機に、岡山にある夫の実家で専業主婦になりました。
しかし、思い掛けなくも、夫の父親が経営する保育園を任され、28歳という若さで園長になったのです。その後、地元の強い要望もあって、夫は社会福祉法人を立ち上げ、保育園を次々と開設。今では、首都圏でも保育園を運営しています。
今年47歳の和代さんは、数カ所の保育園の園長として、岡山と東京を月に何度も行き来し、多忙な毎日を送っています。家では毎日、預かっている園児たちに事故、過ちのないように、神様への祈りを欠かしません。また、岡山と東京にある金光教の教会に参拝し、無事安全をお願いします。
先生からは、「何事も自分の力でしようと思わず、神様が園長と思い、お願いしながら務めさせて頂きましょう」という教えを頂き、これまで大きな事故無くこられたことを、心から感謝しています。
和代さんにとって一番大きな転機は、待機児童が最も多い東京都世田谷区で保育園を開設してもらえないか、という話が持ち込まれた時でした。4人の子どもを抱え、岡山の保育園の運営に手いっぱいでしたが、家族の後押しを受け、単身赴任を決断しました。和代さんの兄妹も全面的に協力してくれ、平成23年、無事開設することが出来たのです。
和代さんは、「自分の力で進んでいないし、色々な出会いにしても、勉強にしても、何か導かれているなということを強く感じます。だから、頑張らなくちゃ、という気持ちが湧いてくるんです」と言います。
思い返せば、小さな頃から参加してきた教会での少年少女の育成活動や、大学で児童教育を専攻したこと、さらには客室乗務員として、世界各地の様々な人たちの考え方や生き方に触れ、経験してきたこと全てが、色々な場面で和代さんの支えになってきました。嫌なことでも、つらくても、一生懸命に取り組んだこと、失敗したこと、その時は意味のないように思えたこと、どれもこれもが無駄事ではなかった。すべては神様のお導きを頂いてのことなんだ、と思えるのです。
今日、保育園では、保護者を始め、地元の人たちとの関係、不足がちな保育士の確保など、対応しなくてはならない事柄をたくさん抱えています。東京で開園した当初は、園の窓を開けると、「うるさい」と電話が掛かってきたり、「散歩の時、うちの前を通らないで下さい」と言われることもあったと言います。
保護者からは頻繁に色々な要望が持ち込まれ、中には子どもに虐待をする親もいます。問題を抱えた時には、教会に参拝して神様にお願いし、相手の立場に立って、時間をかけ保育への理解と協力を得られるように務めています。
子どもは小さな頃、よく手でご飯をくちゃくちゃするものです。中には「汚いからやめなさい」と叱る親がいますが、そんな方に和代さんは、「子どもが触って、確かめて、食べようとする意欲を大事にしてあげて下さいね。根気がいりますが、必ず上手に食べられるようになるし、遊びたいとか、勉強したいという意欲も持てるようになりますよ」とアドバイスします。人を優しく包み込むような笑顔からは、日頃色々な対応に追われている園長としての大変さはみじんも感じられません。
金光教祖は、子どもを叱り叱り育てるな。恐れさせ恐れさせ育てるな、と教えておられます。和代さんは、叱って子どもを育てるのではなく、目の前のありのままの子どもを受け入れ、子どもの歩調に合わせて、その子の成長を楽しめるような子育てを願っているのです。保護者にも保育士にも完璧を求めず、「失敗もOK。何でもOK」という心構えを共有してもらえるように務めています。だからこそ、どんなに多忙でも、柔らかな心で子どもや保護者、保育士に接し、子育てを楽しめるのでしょう。
親は、子どもの幸せを願うあまり、ややもすると先回りして、子どもが失敗しないように、親の言うことを聞く子を育てようとすることがあります。
和代さんは、「そんな親の思いを中心にした子育てでは、子どもの中に、自分で考える力、自らを律していく心が育ちにくいんです。子どもは、頭の構造が大人と違っていて、言葉で聞かされただけでは分からないんですよ。自分でやってみて、失敗して、考え、そこから知恵を獲得するんです。このような子ども特有の発達を理解して、『失敗もOK。何でもOK』というような、おおらかな心で子育てが出来るといいですね」と言います。
実際に保育園では、子どもたちで考え、話し合って物事を決めたり、問題解決に取り組むこともしています。「子どもたちは真剣に話し合うんですよ。時間はかかりますが、ほかの子との関わりを通して、仲良くしていく知恵も身に付き、年々変わっていくんです。そんな子どもの成長を見られるのが一番うれしいし、子どもの変化を通して、保護者や保育士が変わっていけるのもありがたいです」と話す和代さん。
今日も、神様のお導きを頂き、子どもの歩調に合わせ、大人も共に成長していく保育が少しでも広まっていくことを願いながら、楽しく仕事を進めています。