抜け出せるかもしれないよ


●取次を頂いて
「抜け出せるかもしれないよ」

金光教放送センター


(ナレ)今日ご紹介する、辻徳子つじとくこさんは、現在71歳。岡山県金光町にある、金光教本部の受付案内所で、参拝された方たちに、境内の施設案内や、金光教の歴史などを紹介しています。
 元々は、東京都で生まれ育ち、祖母に手を引かれ、金光教の教会にお参りしてました。やがて成人し、教会で知り合った男性と結婚されます。子宝にも恵まれ、成長し、社会人として送り出し、落ち着きかけた時、24歳になった長男の身に、思いがけないことが起きました。

(辻)「長男は大学を出てサラリーマンになりまして、横浜の営業所で営業マンとして働いていたんですね。その時に、急に会社から電話がありまして、『辻君が倒れた。すぐに来てほしい』って電話が入りましたんで、救急車で運ばれた病院に行ったんですね。そしたら、本人はもう意識がなくて、ベッドに横たわっていたんです。事情を聞きましたら、過労で倒れてしまったっていうことなんですね。会社の人から、『すみませんでした。辻君に苦情処理の仕事をして頂いてました。辻君が苦情をもらったものではなくて、他の人たちの苦情、全部の苦情処理を辻君にして頂いてたので、多分ストレスと過労がたまっていたんでしょう』と言われました。階段を上がって、もう1歩というとこで倒れて転げ落ちました。それで頭を打ってしまった。色んな検査をしまして、『命の保証はないです。もし、命があったとしても車椅子か脳障害、半身不随は免れませんから』って言われたんですね。それからですね、1週間後に突然本人が目覚めて、意識が戻ったんですね。そして、どこにも麻痺も残らずに、全部体が動いたんですね」

(ナレ)医師の懸命の治療、徳子さん家族、教会の先生の祈りの中、一命を取り留めました。やがて職場にも復帰します。しかし、事故の後、長男の様子は今までとは違っていました。

(辻)「見た目はもう歩けますし、とっても元気なんです。ところが何かものすごく物事を気にするようになって、何か被害妄想的なことも言い出すし、そして本人が、『皆さんが言うことは分かるんだけれども、それに対して、自分がどのような言葉を持っていったらいいのか…言葉がね、適切な言葉が見付からないんだよ』って、ものすごく悩んだんですね」

(ナレ)実は、頭を強くぶつけたことにより、脳の機能障害が現れていたのです。
 ちょうどそのころ、ご主人は定年退職を迎えました。徳子さん夫婦は、いずれ金光教本部がある金光町に住みたい、と話し合っていたことがありました。長男の症状もあり、これを機に3人で金光町に移り住むことにしました。
 長男は金光教の事務局で働くこととなりましたが、症状は悪化していきます。そんな時、ある講演会を行うことになりました。徳子さんはその日、不安な気持ちで長男の帰りを待ちました。

(辻)「帰ってきた時に、私は、また自分の言ったことが受け入れられなかったとか何か言って、不満だらけで帰ってくるかなと思って、すごい心配してたんですけども、開口一番ですね、『お母さん、このような状態から抜け出せるかもしれないよ』って言ったんですね。よくよく聞いてみると、講師の先生のお話を聞いて、『ああ、この先生なら、ひょっとして自分の今のこの状態を分かってくれるかもしれない』と思って、講演が終わった後、先生のところに行って、『自分はこういう状態でこうなんです』って何か先生に訴えたらしいんですね。じゃあ、先生が、『ああ、よう分かった。君のことはよう分かった。君は悪くないから、自信を持って進んで行きなさい。もし、進んで行く中で、『あ、違ってた』と思ったら、その時にまたそこから引き返してやり直せばいいんだよ。やり直すのは、決して悪いことじゃないんだよ。君のことは、わしがしっかりと神様に願っていくから、自信を持って、安心して、物事に取り組んでいきなさいって。こう言ってくれた先生がいた』と言ってですね。私も、あの時の息子の開口一番、『お母さん、立ち直れるかもしれない』って言った言葉、今でも耳に残ってるんですね」

(ナレ)この出会いをきっかけに、先生の教会にもお参りするようになりました。

(辻)「先生はですね、もう全部吐き出させてくれる。もう心の内をさらけ出してさらけ出して、それで、『元気出すんですよ』って言われて、玄関に奥さんと先生が送ってくれて帰ってくる。また色んなことがあると、またそれを持って、全部さらけ出す。で、先生がまたそこへしっかりと神様に向かってご祈念して下さって、それで、『元気出しなさいよ』って言って、『しっかりわしも拝んでるから』…で、帰ってくる。
 その繰り返しをしている内にですね、本当にいつの間にか…、『あんた、あんまりくよくよしなくなったね。言葉もちゃんと出るようになったね』っていうふうになってた。『そうなんだ』って言って、言われたことも理解もして、ちゃんと発言出来るようになったし、あんまり自分ばっかり責められるっていう思いもなくなったし、本当に元の性格に、いつの間にか戻っていったんですね。本当におかげを頂いて、心も元気になってた」

(ナレ)この後も徳子さん家族は教会参拝を続けました。様々な心配や不満は、喜びへと変わっていきました。そして今、心配りと思いやりを大事にしながら、金光教本部へ訪れる人たちを、温かく迎えています。

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