四人の兄弟


●昔むかし
「四人の兄弟」

金光教放送センター

朗読:杉山佳寿子さん

 昔むかし、ある村に、働き者の夫婦が、母親と一緒に暮らしておりました。3人はとても働き者で、朝から晩まで田畑を耕しておりました。
 けれどこの夫婦にも悩みがありました。それは、子宝に恵まれなかったのです。それで、朝夕神棚に向かって、「早く子どもを授かりますように」と祈っておりました。
 やっと男の子が生まれました。皆大喜びで、松吉まつきちという名を付け、それはそれは大事に育てました。そうするうちにまたまた男の子が3人も出来て、それぞれ名前を、竹吉たけきち梅吉うめきち末吉すえきちと付けました。
 子どもたちは大きくなり、畑仕事を手伝うようになりました。畑も広がり、立派な作物がどんどん実るようになり、お父もお母も、おばあさんも大層喜んでおりました。
 ある日のこと、一番上の松吉が言いました。
 「おいらはこんな土を耕して一生を終わるなんてごめんだ。町に行って働きたい」
 お父もお母も反対しましたが、言うことを聞きません。
 すると、松吉の言葉を聞いていた2番目の竹吉が、
 「あにやんが町に行くなら、おいらは山で働きたい」と言い、そうしましたら3番目の梅吉も、
 「おいらは海で働きたい」と言い出しました。
 またまた、お父もお母も、そして、今度はおばあさんも反対しました。お父は、
 「天地のお恵み、神様のお恵みで、田畑さえ耕せば食うには困らん、わしの後を継げ」と言いましたが、3人の兄たちはそろって家を出て行ってしまいました。
 さあ、どうしたら良いのでしょう。一番下の末吉は、
 「兄やんたちの分まで働く」と言い、本当に朝早くから日が暮れるまで、一生懸命に畑仕事をしました。
 2年ほど経ちますと、2番目の竹吉と3番目の梅吉が盆と正月には家に顔を見せるようになりました。竹吉は山で採れたキノコや、猟師の親方にもらった熊の肉などを土産に。そして梅吉は海の魚を持ち帰り、家の人たちを喜ばせました。それぞれ日に焼けて、一層たくましくなったようです。
 ある時、ひょっこりと町に行った1番上の松吉が、青白い顔をして帰ってきました。その様子がただならないので、お父が尋ねますと、
 「客にだまされた。店の高価な品を、たあんと買うと言われたが、金を支払ってもらえず持ち逃げをされた。ご主人に大層な迷惑を掛けて、もう生きてはいられない」と言うのです。
 それを聞いておばあさんは心配のあまり寝付いてしまいました。末吉も心配でいたたまれずに、山と海の兄たちに知らせようと、家を出て走って呼びに行きました。
 そうして皆が帰ってきたのですが、寝ていたはずのおばあさんがおりません。探してみますと、裏の竹やぶの所におりました。
 そして、
 「この竹は梅雨の終わりごろ生えてきた。それから、子どもの背丈ほど大きくなったが、それから伸びなくなってしまったんだよ。そのころは日照りが続いて雨が降らなかったからね。もう枯れて駄目になるかと可哀想に思っていたら、雨が降ってまた伸びていった。ところがまた日照りがあって、でも雨が降りまた伸び、それの繰り返しで、今ではこんなに高くなり枝も茂るようになった。お前たち4人の子も、今では丈夫で立派な若者になった。この竹のように枯れそうになっても雨の度に伸びていく。ほんに天地のお恵み、神様のお計らいだ。後はもう子どもたちに任せよう」と言いました。
 1番上の松吉は、うなだれたまま、おばあさんの言う言葉を心にしっかりと刻んでいるようです。
 すると、弟の竹吉と梅吉が口をそろえて言いました。
 「おいらたち、働いてもらった銭はしっかりためてある、兄やんそれを使っておくれ」
 それから、3年ほど経ちました。
 働き者夫婦の畑には、夫婦の他に、すっかりたくましくなってくわを振るう松吉と、寄り添うように働いているそのお嫁さん、そして末吉の働く姿がありました。そうして赤ん坊をあやすおばあさんの姿も、よく見掛けましたと。
 
 おしまい。

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