幸せが実る心


●先生のおはなし
「幸せが実る心」

金光教不知火しらぬひ教会
池本いけもとひろ 先生


 私は、幼い頃、アトピー性皮膚炎がひどく、そのことで、よくいじめられていました。学校が嫌いな私は、幼い頃からお参りしていた金光教の教会が心のよりどころとなっていました。
 「どうして、私ばかりがつらい思いをするんだろう?」と悩んでいた私に、教会の先生がお話して下さったことがありました。「作物が作られるには、日の光や雨、そして豊かな大地が必要です。大地は、どんなに汚いものも、栄養にして作物を作ります。心も同じで、つらいこと、嫌なことを黙って治め、自分の心の栄養にしていく大地の心になれば幸せが実ります。神様は、常にあなたたちの心を育てようと働きかけて下さっているんだよ」と教えて下さいました。
 私は、先生のこの時のお話が後々しみじみと心に深く感じるようになりました。小学4年生のある日、学校でいじめられ、母に泣きながら悔しい気持ちをぶつけました。
 「なんで私ばっかりつらいことがあるの?」
 母は優しく受け止めてくれました。
 「つらかったね。悔しかったね。よく辛抱したね。教会の先生が教えて下さったでしょう? つらいこと、悲しいこと、全部あなたの心の栄養になることを。心が強くなるための神様のお働きよ。だから元気な心で受けていこうね」と優しく話してくれましたが、なかなか元気が出ません。そんな時、私宛に鮮やかな色で描かれた凧揚げのセットが届きました。
 思い掛けないプレゼントにびっくりしました。母が、「神様が応援して下さってるね! 凧は、風がないと飛べないでしょ? 風が吹けば吹くほど高く飛べるよね。いじわるを言ってくる子は強い風。ここを元気な心で受けたら楽しめるよ。元気な心で受けていこうよ」と話してくれました。私は、「神様が、常に応援して下さっているんだ!」と感じたら、心が明るくなり元気が湧いてきました。
 このような体験を重ねていくうちに、「アトピーになったことも無意味ではない。神様が私の心を育てようとして下さっている」ということを強く実感するようになりました。いつのまにかアトピー性皮膚炎もすっかり治り、性格も、体質も変わっていました。
 幼い頃のこの体験は、子育ての場面でとても役立っています。娘が小学5年生の時のことです。ある日、「学校に行きたくない」と沈んだ顔で相談してきました。「リーダー的存在の子が、仲の良い子を無視しようと言っている。でも、自分は、したくない。でも、断ったら自分がいじめられる」と話してくれました。私は心配が頭をよぎりましたが、「娘が本気で神様に向き合う時が来たのだ」と思い、自分のいじめの体験を娘に伝えました。
 娘は真剣に聞いてくれました。最後に私は、「辛かったね。話してくれてありがとう。あなたの心が強くなる稽古だよ。だからもし、いじめられても大丈夫。お母さんも、神様もついてるからね」というと、娘は、たちまち笑顔になり、元気に登校しました。いじめられている子に勇気を出して「おはよう!」と声を掛けたことから、いじめは解決しました。
 この体験のおかげで、娘は、問題を通して自分が変わること、心を育てることを学びました。いじめられた子、いじめた子どもたちとも、今も仲良しです。以来、問題が起きたら心の点検と、自分の心作りが、私達親子のありがたい答えの出し方になっています。
 その娘も今では高校生になり、友人関係の悩みも複雑になってきました。しかしその問題こそ、心のお育てを頂く掛け替えのない成長の場でもあります。また、問題に直面したときに、どう乗り越えていくのか。どう答えを出していくのか。その答えの出し方を伝えていく大切な時でもあると感じています。
 ある日、友人に裏切られた悔しさを訴えてきたことがありました。「また、あの子が自分勝手なことをしてね……」と娘が言います。「そっかー」と、私は相槌を打ちながら、心の中で祈りました。「どうぞ、この問題を通して、私と娘の心が育ちますように」。そして、私自身の心の点検をします。じつはこの時、私は、考え方が合わない人を、心の中でずっと責めていたのでした。口には出さずとも、冷たい態度を取っていました。考え方が合わない人を受け入れきれない小さな心。自分の我の強さが嫌になっていました。
 例え、言い分が正しいとしても、友人を責める娘の姿と自分が重なり、「神様が娘の姿を通して、私に改まるところを教えて下さっているんだなあ」と感じました。そして、娘の話を聞いて、私自身が気付かされた反省すべきことを話します。すると娘は、「なるほど。私も気付かないといけないところがあるから、この問題も起きてるんだね。心の点検だね」と落ち着きを取り戻してくれました。それから数日後、「私の心にも見下すような心があることに気付いて、責めずにいたら、友達も変わってた。黙って治めてよかったよー!」と生き生きと笑顔で話してくれました。
 娘は、今では、友人関係に悩んでいる子の相談にのることもあります。素晴らしい友人に恵まれ楽しくありがたい学校生活を送らせて頂いています。はじめは、「どうして?」と思うようなことも、「心の点検」をしていくと、「なるほど!」という答えが出てきます。心が育っていく喜びと、神様に守られている安心が得られるから、ウキウキワクワクの毎日が送れます。どんなに辛いことも自分の心の栄養にしていく大地の心は「幸せが実る心」だと実感しています。

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