神様も一緒に


●信者さんのおはなし
「神様も一緒に」

金光教放送センター


 三重県の金光教伊勢いせ教会にお参りされる世古口禮子せこぐちれいこさんは、8月15日、終戦記念日の正午に生まれたという72歳の女性です。
 人は誰でも苦しみや災いから逃げたくなるように思いますが、世古口さんの場合は、神様を信じる揺るぎない心で、苦難を乗り越えてこられました。もちろん最初は不安な気持ちがありましたが、病気になったことが切っ掛けで教会の先生と一緒にお祈りする機会も増え、信心が深まっていきました。
 最初の異変は70歳を迎えたころでした。突然3リットルの腹水がたまり、食事も出来ず、つらい思いをしました。原因が分からず、泌尿器科と婦人科の病院を転々としたそうです。お医者さんにとって手の打ちようがなかったのか、もう来ないで下さいと言わんばかりに、「あなたは私の患者じゃありません。関係ないですから」と言われた時には、とても傷付きました。患者というのは不安な気持ちがあるので、お医者さんの言葉には敏感です。世古口さんはその時のことを思い出しながら、目をつぶって言いました。
 「年末から年明けは、本当につらかったです。お腹に水がたまって食事も頂けないんです。でも、大みそかになって、伊勢市内でいい先生に出会え、こう言ってもらったんです。『このつらい姿で、お正月をまたぐとはどういうことなの? 私が紹介状を書きますね。病院を訪ねた時、すぐ診るように電話しておきますから』と言って処置をして下さり、お話もして下さいました。私にとって、迎え入れて下さるお医者さんを授かったことは、とてもうれしいことでした」。
 世古口さんは、くわしく検査をしてもらい、お医者さんから「原発性腹膜げんぱつせいふくまくがん」であると告知されました。腹膜の中にがんが入り込んでいて手術は出来ない。抗がん剤治療しかないということでした。でも、検査をするまでずっと原因が分からない不安があったので、病名を聞いたことで、むしろ、「見付かって良かった。ありがとうございます」という気持ちになったそうです。
 抗がん剤治療は、28日周期で6回受けました。2週間くらい経つと、副作用で髪の毛が抜け始めました。そのことを息子さんに伝えると、こう言われました。「病気が治ったらまた生えてくるでしょう。僕の場合はそうはならないけど…」。息子さんは元々髪の毛が多くないそうで、それを聞いた時、クスッと笑いが出ました。副作用で眉毛やまつ毛も抜けましたが、お姉さんからは、「それだけ全身にお薬が行き渡っているということだよね」と言われて、「ああ、その通りだ。神様が全身に働いて下さっているんだ」と思えるようになりました。
 世古口さんは言います。「抗がん剤治療と聞くと不安になりますが、心配したり、あれこれ思うよりも、神様も一緒に治療して下さる。おすがりして、お任せしようという気持ちになりました」。
2度目の治療が始まりました。ある朝、激しい痛みで目が覚めると、お腹全体を鳥のくちばしで食いちぎられているように痛みました。世古口さんは体を大の字にして無我夢中でお願いしました。「どうぞ金光様、この激痛を通して、私にがんと向き合わせて下さい。病気を乗り越える力を授けて下さい」。何度も繰り返しお願いしました。
 時計の針を見ると、朝の5時から2時間経っていましたが、その間、10分くらいに感じたそうです。「この痛みがあったから、真剣に向き合うことが出来ました」と、世古口さんは話されます。そこには苦しみから逃げるのでなく、神様におすがりしながら試練を受け止め、立ち向かっていく姿がありました。
 その後の血液検査で数値が随分良くなりました。残り4回の治療も無事に済みましたが、世古口さんは、教会の先生の言葉に元気を頂いていました。教会の先生は、「この病気はマラソンと同じようなものです。途中には色んな格闘がある。ある時には、もう自分の心が折れそうになることがあるかもしれない。そういう時は、どうか神様頑張らせて下さいとお願いをして下さい。あなたは1人じゃないですよ。私はずっとあなたの病気がおかげ頂けるように、毎日祈ってますから!」と世古口さんを励ましてくれました。
 しかし、その後、病気が再発し、昨年3月から半年間、抗がん剤治療を受けました。その時も、教会の先生は言いました。「例えばですが、大きな借金をしたとして、一度に返すのは大変でしょう。それと同じで、この病気も、2回に分けて治療を受けさせて頂いているのでしょう。1度目の抗がん剤治療では、お腹にたまった水を抜いて頂きましたからね」。教会の先生の言葉を聞いて、世古口さんはまた受け止める思いになれました。
 こうして2度目の抗がん剤治療を終えて、1年以上が経ちました。
 現在の世古口さんは、とても体調がいいそうです。数値もずっと安定しています。世古口さんはこう言います。
 「神様におすがりしていたら大丈夫。心配が出たら、あれこれ考えずに教会に足を運んで、先生に話を聞いてもらいます。私は病気をしてから、心をさらけ出せるようになりました」。
 信仰の力は、こうも人を強くさせるのでしょうか。前を向いて話す世古口さんの目は、神様に生かされている喜びと希望で輝いていました。

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