たった一言『おはようございます』


●信心ライブ
「たった一言『おはようございます』」

金光教放送センター


(ナレ)金光教の集会で行われた発表や講話などを録音で紹介する「信心ライブ」。今日は、大分県にある安岐あき教会の教師・長木重子ちょうきしげこさんが、平成23年3月に、大阪で開かれた集会でお話されたものをお聞き頂きます。
 ある日、教会に1人の女性がお参りされたそうです。若くして大家族の長男に嫁いだ女性です。忙しい仕事と家事に追われて、お礼の言葉はおろか、あいさつも交わさない日々の中で、彼女は人知れず悩んでいたというのです。

(音源)「私は、今日まで主人に支えられてきたけれども、主人にお礼をしたことがない、言うたことがない」。皆さん、いかがですか。奥さんやご主人に、毎日お礼が出来ておられますかね?
 この方は、まず教会にお参りしてきて、その時、55を過ぎておられました。「ほんとに恥ずかしいことですけれども、先生、こういうお願いをしてよろしいでしょうか」と言われた。「なんですか?」。「私は、主人に『おはようございます』『ありがとう』『おやすみなさい』を言うたことがない。今日から主人に『おはようございます』と言いたいんです。今までゆっくり話す時間もなかった。今は二人暮らしですので、ゆっくり話す時間はいっぱいある。まず主人に『おはようございます』から始めたい。どうぞ心から主人にそういう言葉が言える私にならせて下さい」。
 えっ、この人、55も過ぎとるのにと、ふっと思ったですね。ところが、そう思いながら、「あっ、この人にとっては大事なことだったんだ」と。その人の願いを受け止めさせて頂いて、「そうだなあ。今日から一緒に願わせて頂いて、稽古させてもらおうな」と言うて、帰られました。
 ところがですね、なかなか何十年という間、一緒に生活して、言ってないと、いつ言おうか、いつ言おうかって主人に付いて回って、いつ言おうか、いつ言おうかとする。すると主人が、「な~ん、おまえ、ゴソゴソゴソゴソ横付いて回るのか」とか言われる。朝、布団を上げる時に、そばに黙って立っとる。「何か用があんのか?」と主人が言うけど、出ないんだそうですよ、本当に出ない。今日は言わして頂かなと思って、「今だ!」と思って、主人が布団を上げる時に、「お父さん、おはようございます」と言った。そしたら主人が、「うん」って言った。もうその一言。「おはようございます」と言えた自分に対して、うれしくてうれしくて、その場に座り込んで泣きました。この人にとってはね、本当にうれしかったんだと思います。
 19歳で嫁いで、主人の弟や妹たちのお弁当を作って、学校に出す。おしゅうとさんたちからは、「ああせいこうせい」と言われて、夜、最後にお風呂に入る時は、五右衛門風呂に立ってひざぐらいまでしかお湯が無かった。それでも黙って入ってた。そういう時に、主人が、「今日も、やおなかったのう」とこう言ってくれよったんだそうですよ。涙が出ていた。そういう支えてくれた主人に、結婚してそれこそ何十年やないですか。やっと、「おはようございます」と言えた。もう足が砕けてね、しゃがみ込んで泣いた。で、はっていって、家にお祭りしてあるご神前で泣きながら、「ありがとうございます、やっと主人にあいさつが出来ました」と言うてお礼を申したんだそうです。
 すぐ教会に電話を掛けてくれて、「先生、おはようございますと言えた」。もう泣きながら掛かりました。その時、私は思った。たった一言、「おはようございます」が言えた。こんなにこの人はうれしいのかなと思いましたね。
 私たちは、毎日、「お父さん、おはよう」「おやすみ」って言ってますよ。どれだけのお礼が神様に申せているのか。当たり前にしゃべっているなと思いました。それから、あっ今日も朝から主人の顔を見ることが出来た。「お父さん、おはよう、」こう言える。今日、「お父さん、お休み、お疲れさん」と言える。
 そこからすごいものが生まれるんですね。この人が、「おはようございます、お父さん」と心から言えるようになった。そしたらご主人が、「あ、おはよう」と返ってくるようになった。その人はお勤めに行っておられましたので、お弁当を作って、「はい、お父さん、行ってらっしゃい」と言えるようになったと。ご主人が、「はい、行って来るぞ」とおっしゃった。「おはよう」から相手の言葉も返るようになった。
 それで、ある日、お弁当を持って帰ったご主人が、「ただいま。今日の弁当はうまかったぞ」と言ってくれた。ほんでお弁当を抱え込んでまた泣いたと。うれしくて。たったねえ、「おはようございます」「ありがとう」「うまかったぞ」でしょ。その中に、どれだけの神様の思いが含まれているかなあと思いましたね。

(ナレ)夫が妻に掛けた言葉、「今日もやおなかったのう」。これは大分県の方言で、「簡単にはいかんかったなあ」「大変だったなあ」という意味だそうです。そう労り続けてくれた夫に、「おはようございます」のたった一言。その一言が言いたくて、神様にお願いをしていく。
 家族の間では、ついつい何も言わなくても分かってくれるだろうと思いがちですが、実際には伝わっていなくて、もめてしまうこともあります。神様に願っての「おはようございます」の一言が、夫の「今日の弁当はうまかったぞ」という感謝の言葉につながっていく。
 家族や身近な人にお礼やあいさつを言葉にすると、その言葉を通して神様が働いて下さることを教えられました。
 身近な人に心を込めて、「おはようございます」。

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