●信者さんのおはなし
「息子に手を差し伸べられて」
金光教放送センター
(ナレ)兵庫県の金光教山手教会にお参りする、濱田博子さん68歳は、自閉症のお子さんを持つお母さんです。幼い時の息子さんのことをお話していただきました。
(濱田)制止が利かないというか、「自動車が来てるから、そっちに走ったらダメよ。こっちに帰っていらっしゃい」って言ってもなかなか聞けなくて、自動車の方に突っ走っていくというような、そんな子だったんです。
たぶんもう小さい時から、そういう症状はあったんやと思うんですけど…。長男長女はこういうことをしてなかったけど…
ほうきの先端にひもがついていて、そのひもを一生懸命、釘に掛けようとしてるんですけど、掛からないんですよね。あの子も小さかったんで、椅子を持ってきて、椅子の上に立ってしてても、やっぱり掛からなくて。それでも一生懸命掛けてる姿を見て、その時に私は何か病気なのかなというふうに感じれば良かったんですが、「上の子はこんなに根気がなかったのに、この子はすごい根気があるなあ」っていうふうに良いように考えてたんで、自分自身では遅れてるとか、ちょっとおかしいん違うかというようなことは気が付かなかったんですが。
でも、隣におばがいて、そのおばがしょっちゅう遊びにきてたもんですから、「ちょっと寿君、何か診てもらった方がいいん違うかな。お兄ちゃんお姉ちゃんらと比べたら言葉も出てないし、話もしないし、してることがちょっとおかしいような気がするから、一遍相談してみたらどう? 児相とかに行って」というふうなことを聞いたんです。そういうおばの口を通して私に伝えてくれたのも、やっぱり神様のお心かなと思いました。
(ナレ)児童相談所に行くと、団体で生活する方が良いと言われ、小学校に行くまで施設に通うことにしました。少しは変わってくるかな、成長できるかなと祈る思いでした。そして卒園を迎えた日のことです。
(濱田)卒園の時が、私もすごく意外だったんですが、何か先生と別れる、お友達と別れるというのが、言葉もない子なのに、何か感じたのか、あの子一人泣いてたんですよ。「やあ感情があったんやな」というふうに、親もひと安心というか、寂しさを感じてる、悲しいという思いが芽生えてきたなというふうに思わせてもらった一面でしたね。
(ナレ)卒園してから、養護学校に行くか地域の小学校に行くか迷いましたが、金光教の教会の先生や家族に相談して、小学校に行かせることにしました。
(濱田)結局、遊ぶということが一番難しいのかな? あの子も言葉が、思いが伝えられたらいいんですけど、伝えることが苦手で言えないので、なかなか遊べなかったのですが、まあ休み時間とかはみんなと一緒に走り回ったりとかはしておりました。
先生が、「濱田君は…寿男君はっておっしゃったかな? 可愛い女の子が好きですね~。可愛い女の子の後ろを一緒に走って、手をつないで走ってました」とおっしゃって、「やあ~」と思ったんですけど。本当に良かったなあ、6年間、地域の小学校に行くことが出来たことで、まあ良かったのかな。中学に入る時はもう養護学校、高校も養護学校でお世話になったんです。
(ナレ)濱田さんにとって教会は安心できる場所でした。
(濱田)そうですね、やっぱりもうどうしようと思った時に教会に来て、先生にお話しさせてもらったら、やっぱり親が子どもを見る観点と全然違った見方で見ていただけますし、何か先生のおっしゃること、「あ、そうだな」というふうに安心して、確信というか、そういうものを持たせてもらうことが出来ましたね。
(ナレ)その寿男君ももう40歳。今はどっしりと落ち着きました。作業所で、チョコレートを袋に入れる仕事をしています。また、地域の施設で、2泊3日のショートステイをし、自立体験をしています。
(濱田)最近ちょっと階段上がる時に、ハーハーいうんですね、私。それで寿男と一緒だったらね、私が、「はあー」って言いながら一歩ずつ上がってたら、手を差し伸べてくれるんですよ。それで手をつないで上がってくれて、「ああ、ありがとうね。ここまででいいよ」と言うと手を放すんですけど。そういうちょっとした気遣いができるようになったかなと思って。そういう行動で示してくれるようになったんですね。やっぱり訓練させてもらってるっていうか、色んな方と一緒に共同生活できてるということで、そういう気遣いというのが少しずつ芽生えてきているように思います。
(ナレ)寿男君の成長ぶりをうれしそうに話す濱田さん。今日まで色々な方のお世話になってきたそうですが、中でも教会が大きな支えでした。
(濱田)お教会に来て先生に、「こうだったんです」みたいなことを話すと、やっぱり色々と言って下さることでまた安心を頂いて帰れるのかなと思うんです。
(ナレ)濱田さんは元々、心配性でした。しかし教会にお参りすると、その心配な気持ちを神様に任せることができ、安心な思いに変えていけるのでしょう。
濱田さんは言います。
「私は信心していなかったら、色々とワガママな気持ちが起きていたと思います。信心のおかげで、感謝が出来て、今元気に過ごせています」。そう話す濱田さんの表情は、とても穏やかでした。