●信者さんのおはなし
「教会は元気の源」
金光教放送センター
福岡県の門司港教会にお参りしている永富佐江さんは今年57歳。2人の大学生の娘さん、そしてご主人の4人家族で、彼女も公務員として毎日充実した日々を送っています。以前は何でも悪いように考えてしまう、いわゆるネガティブだった彼女が、今では前向きに捉えられるようになったという、そのいきさつを明るく語ってくれました。
それは佐江さんが高校1年生の冬休みのことでした。それまで一家の大黒柱だったお父さんが体調を崩して入院をしました。検査の結果、肝臓にがんが見付かりました。思ったより病状は悪く、手術する間もなく、入院後、たった1カ月で亡くなってしまったのです。大黒柱を失ったことで一家の生活は一変してしまいました。しかしいつまでも悲しんでばかりいられません。今度は、今まで専業主婦だったお母さんが、お父さんに代わって娘3人を育てなければならなくなりました。
40歳を過ぎて初めて勤めに出るようになったお母さんを頼りに、女4人、力を合わせての生活が始まりました。ところが、今度はそのお母さんにもがんが見付かったのです。
平成に入ったある日、お母さんが、「どうも胃の辺りがおかしい」と言うので病院で診てもらうことになりました。検査の結果はがん。お父さんを奪った、あのがんです。
幸い初期だったのですぐに手術を受け、仕事にも復帰できたのですが、心配なのは再発でした。病院の先生の話では、「3年間、何もなければ大丈夫」とのことです。ところがその3年後、血液検査に異常が現れたのです。佐江さんは居ても立っても居られない気持ちになりました。
「やっとその3年が来て、これから家族4人、安心して生活しようとしている矢先なのに、なぜ…。みんな真面目に生きてきたのに…」。お父さんに続いて大切な、大好きなお母さんも失ってしまうのでは…、そう思うとたまらなくなり、心が張り裂けそうになるのです。佐江さんたちを育ててくれた大切なお母さんです。失いたくない。そんな時、思い出したのが、当時同じ小学校で働いていた4歳年下の女性、養護教員の牟田先生のことでした。
牟田先生はとにかく明るい先生でした。食事をするといつも、「ああ、おいしかった。幸せ~。ありがたいなあ」。そんな牟田先生と話をしていると、佐江さんも元気が出てくるのです。実はその牟田先生の実家が金光教の教会だったのです。最初の頃はそのことを知らなかったのですが、親しく話をしているうちに、だんだん会話の中に金光教の教えが出てくるのです。牟田先生の育った金光教の教会なら、きっとお母さんを助けてくれる。そう思えるようになったのでした。
いざ教会へお参りするとなると、勇気が要りました。しかし、どうしてもお母さんを助けてもらいたい、その一心で教会の門をくぐりました。
そして佐江さんは、牟田先生のお父さんである教会長先生に、お母さんのことを話したのです。話をしているうちに、佐江さんは不思議な感覚を覚えていました。お父さんを亡くしてから、ずっと佐江さんの心の中にあった何かよく分からない正体不明の塊が溶けて、今まで頑なに一人で抱えていた重い荷物を、やっと下ろすことができたのでした。
実は、教会にお参りする前も、一人で色んな神様にお母さんの無事をお願いしていました。ただ、神様といってもどんな神様なのか分からない、いつもただ一人で願うだけです。ところが金光教の教会は違いました。話を聞いてくれるだけでなく、神様のお話を聞かせていただける。そして、願いを神様に一緒に願ってくださる。「もう私は一人ではないんだ」、そう思っただけで、佐江さんの心は勇気で満たされてきました。そして、なぜか、「絶対におかげが受けられる」。そんな気がしてきたのです。
お母さんの血液検査の異常値はその時だけで、それからはずっと正常値に落ち着きました。
今年、元気に83歳を迎えたお母さんの病気のことから始まった教会参拝は、28年経った今でも続いています。教会にお参りし、先生と話をしていると心が落ち着き、元気が出てくるのです。おかげで、お母さんのことだけでなく、佐江さん自身も考え方が前向きに変わってくるというお育てを頂きました。
しかし、全ての物事を前向きに捉えられるようになったかというと、なかなかそうはいきません。仕事をしていても今でもつまずくことだらけです。
ある日、教会で先生に、「私って、つまずくことだらけなんです。大学だって、第一志望はダメだったし」。そう言うと、先生は、「だからいいんですよ」と言われるのです。「もしも一度もつまずかないでスッと登ったら、落ちる時もやはり一気に下まで落ちてしまう。だけどね佐江さん、つまずきながら、ぶつかりながら登ったら、もし落ちることがあっても、途中でぶつかるので下までは落ちませんよ」。そう言われるのです。佐江さんは笑ってこう答えました。「だったら、私、大丈夫です」。
佐江さんは言います。「世の中には以前の私のように、心配で心が潰されそうになっている人が大勢いるはずです。そんな一人ひとりが、私のように一人で苦しまないで、神様に助けていただくことのありがたさを知ってもらいたいのです。今度は私が、そんな人たちの手助けをしたいのです」。そう話す佐江さんの笑顔には、優しい強さがうかがえました。