●信心ライブ
「ツンケンしていたMさんが…」
金光教放送センター
(ナレ)おはようございます。
今日は、金光教本部在籍の教師、金光英子さんが、昨年1月に金光教本部でお話されたものをお聞きいただきます。
当時、金光図書館の司書として忙しい毎日を送っていた英子さんは、28年前の夏、がんが見付かり入院されました。その時の出来事です。
(音源)先生から頂いたお言葉が、「悪性です。すぐ手術しましょう。明日入院してください」というお言葉だったので、私は入院させていただきました。
その時にですね、病室は2人部屋で、もう1人先に入院していらっしゃる先輩がおられたわけです。「今日から入院いたします。どうぞよろしくお願いします」と私は頭を下げさせていただきました。
そうするとですね、私よりちょっと年上だったと思うんですけど、その方はどうおっしゃったかというと、「私は若い人とは合わん」って、すごく激しい口調で言われたのでびっくりしました。40歳の私を何歳と思ったのかちょっと分からないんですけど、ああそうですかと言葉を返しました。そして、部屋にロッカーがありましたので、そのロッカーを開けますと、ハンガーがありました。ハンガーを取り出して洋服を掛けようとしましたら、その方が、「それ、私のハンガー」って言うんです。「あっそうでしたか、それはすみませんでした」と言って、怒ったようだったのでびっくりしました。それ以後ですね、何をしてもツンケンツンケン、突き刺さるような言い方をなさる同室者のMさんでした。
入院いたしますと、それまでの「分単位、秒単位」で過ごしていた毎日と違いまして、時間がたっぷりありました。じゃあ、このたっぷりある時間を、人のお役に立つために使おう。特にMさんに対して使おうというふうに思わせていただきました。
お役に立とうと思うとですね、入院するとやるべきことがたくさん、やってもいいこともたくさんありました。食事の配膳をすること、片付けること、お掃除、色んなことがありましたので、それをさせていただいておりました。
お医者様が、「どうですかー?」と言ってMさんの所に聞きにこられます。そうするとしかめっ面で「傷が痛い」、「食欲がない」、「気分が悪い」などなど、そういうことをおっしゃるので、お医者様も閉口しておられるような状態でした。
そして看護師さんも、「お注射しますねー」と言って来られると、いやーな顔をして、「あんたの注射は好かん、嫌いじゃ」、「痛いのは嫌じゃ」とかなんとか色々おっしゃるわけですね。「まあそんなことを言わんと、すぐ済みますから」と言いながら看護師さんも這々の体で退出していかれます。
私は、外が暑いのに冷房があってありがたい、ラジオも聴き放題、食事を作らなくても、自分の体にぴったりの食事を作って持って来てくださる。もう本当にありがたいこといっぱい。普通のことを普通に言いながら、お役に立つことをしておりました。
3日目の朝のことです。歯磨きと洗面を済ますと、「おはようございます」。まあ、お互いにあいさつをさせていただくということがあったんですけれども、私も、「おはようございます」とあいさつをいたしました。
すると、Mさんが私の方を向いて、頭を下げられたんです。「あなたのような若い方に教えられました」と言うんですね。
「えっ? どういうことですか?」って聞いてみると、「私は、私ほど我慢できる人はいないと思って毎日暮らしてきました。嫌なこと、駄目なこと、悪いこと、困ったこと、不満がいつもいつもいっぱいあって、それを我慢、我慢、我慢して暮らしてきました。そして入院したらここで、『Mさん、我慢せずに痛い時は痛い、嫌なことは嫌だと言ってください』と看護師長さんに言われた」と言うのです。「そうだ、痛いこととか嫌だとか、困ったこととか駄目なこと、それを言わせてもらっていいんだと思ったら、すっきりしてそれを言うようになった」というふうにおっしゃってるんです。
「ところが、あなたは、(私のことですけど)良いこと、美しいこと、ありがたいこと、楽しいことを、ありがたがったり、喜んだりして、いいなーと思いました。これからは私も、ありがたいことを探して、喜んでいけるようにしたいと思います」とこうおっしゃってですね、わーっと、こういうふうにベッドの上で正座したままそこで、わーっと泣かれたんです。
私にとってはびっくりです。最初に、「若い人とは合わん」と言われたこともびっくりでしたけれども、もっとびっくりしたのがこの3日目の朝の出来事でした。
(ナレ)いかがでしたか。
英子さんの喜びに満ちた言葉や行動に触れたMさん。Mさんの心は和らぎ、ほっこりと温かい心が生まれました。
その後、お見舞いに来た方が、「この部屋は笑顔であふれているので、病室ではないみたい」と言って驚かれたといいます。
Mさんは、あれほど嫌がっていた注射の時も、看護師さんに、「ありがとう」とお礼を言うようになり、お医者さんには、「食欲はないけれど、梅干しがおいしかった」と答え、お医者さんからは、「あなたの笑顔で私も助かります」と言ってもらえたそうです。
喜ぶ心は周りの人にも喜びを与え、お互いにうれしい気持ち、幸せな気持ちになれるんですね。
Mさんが気付かれたように、私もありがたいことを見付け、一日一日を過ごしていきたいと思いました。