●先生のおはなし
「月極駐車場」
金光教行橋教会
井手美知雄 先生
(ナレ)おはようございます。パーソナリティの岩﨑弥生です。
今、車に乗りながら、ラジオを聞いてくださっている方もいるかもしれません。車を持つと便利で良いのですが、それに伴って経費も掛かってきます。ガソリン代に駐車場代。駐車場は、「なるべく便利で、安いところ」というのが借り手の心情ですが、駐車場を経営している側にも、いろいろな問題や悩みがあるようです。今日は、その駐車場にまつわるお話を聞いていただきます。
福岡県・金光教行橋教会、井手美知雄先生のお話で、「月極駐車場」。
(本文)私が奉仕する教会に数年前から参拝する中年の女性が、最近浮かぬ顔をしています。話を聞くと、「私と兄とで市内に共同経営している10数台分の月極駐車場がありますが、その近くに近々不動産会社が駐車場を開くということです。そうなると、経営がどうなるか心配です。向こうの利用料が安いのです」と言います。それを皮切りに、参拝しては、「来月からの契約を中止するお客が一人二人と出てきました。このままだと、根こそぎ契約者を持っていかれそうです」と言います。疑心暗鬼です。「周辺の月極駐車場を調べたら、競合するのは私のところだけです」と深刻に話します。そうこうするうちに、向こうの新しい駐車場では、お客の審査が始まりました。
おろおろして参拝する彼女と一緒に神様にお祈りした後、私はこの際、金光教の信心ではどのようなお土地も大切に思うことを分かってもらいたいと、こう申しました。「あなたにぶしつけながらお尋ねしますが、これまでの満車のお礼を申し上げたことがありますか」と尋ねました。首をかしげて黙っています。さらにお尋ねしました。「その駐車場は元々どなたのですか」「それは、亡くなった父からの財産分けです」「そうですか。あなた方の先々を考えて残してくださったのでしょうが、亡くなったお父さんが仮にも、『私にご慰労金を払え』とは言いませんよね。親とはそういうものですからね。でも、あなた方から『お父さんのおかげで今日までも経営ができています』と、感謝の言葉を捧げたことがありますか」と申しました。返事はありません。
それで続けて、「その上で聞きますが、そのお土地はどなたのお土地と思いますか」と尋ねました。「名義は私と兄です」と、ここははっきりと言います。「あなたに是非聞いていただきたいのですが、金光教では、お土地は神様のお体そのものと受け止めています。所有はそれぞれがしていますが、信心からいうと、預からせていただいているのです。そのお体から生まれる石油や木材や農作物や、そういうものに神様が『取得税』を払えとは言いません。お与えくださっています。あなた方についても、神様は土地代を払えとは仰いません。それならば、大いに感謝を申し上げ、駐車場に手を合わせるような心持ちになっていただければよろしいのですが」と申して、お供えのお神酒をお下げしました。これを駐車場の四方にまいて、手を合わせますようにと勧めました。
彼女は参拝の都度、不安のままに契約状況をお話しされます。私は、「神様にお任せいたしましょう。その駐車場を大切にしていけるよう、一緒にお願いしましょう」と元気付けました。
しばらくしたある日、少し落ち着いた物言いで、「このことをきっかけに、向こうに見合う利用料にしたいと思います。父の代からのお客さんもいます。そのお客さんにも喜んでもらえれば、それが父の供養にもつながろうかと思います」と言うのです。駐車場に出向いて、手を合わせるうちに、不思議とそういう気持ちが生まれてきたのです。彼女は、「どうしたら駐車場が生きてくるのか求めていきたいので、そのことを神様にお願いしてください」と言います。さらに、「わざわざ数ある月極駐車場から私方を選んでくれています。今までは、契約の書類やら入金やら、管理に気を使うばかりでしたが、ご利用くださることがまずうれしいことです」と言葉を重ねるのでした。
今、再び満車の利用を頂いています。私は、彼女がありがたさに気付く心の経営をされるようになられたかと思っています。利用者の一人ひとりの交通安全を祈り、幸せになりますようにと願う、彼女のこの頃です。
(ナレ)いかがでしたか。
お話の彼女は、「お土地は神様のお体そのもの」ということを知りました。そして、お土地を使わせていただくことに感謝する心が芽生えました。問題が起きた時には、経営を心配して、「土地を利用する」という考え方でしたが、先生のお話を聞いてからは、「どうしたら駐車場が生きてくるのか、お父さんが喜んでくれるか」を求めるように、思いが180度変わっていきました。
彼女が神様に感謝し、神様が喜ぶ生き方に変わっていくことで、わざわざ数ある中から彼女の駐車場を選んでくれるといううれしいこと、ありがたいことが、向こうからやってきたんですね。