何を見ても聞いてもイライラする



●教師インタビュー
「何を見ても聞いてもイライラする」

金光教放送センター



(ナレ)子どもを育てるのは、楽しいことがたくさんある一方で、その時々の悩みも絶えないのではないでしょうか。広島県大竹市に住む早羽総子はやばさとこさんは、娘さんと息子さん、2人のお子さんを育てています。息子さんが小学校の高学年になる頃、早羽さんは思い悩むこととなりました。

(早羽)現在高校3年生になる息子のことです。以前、自分の思いどおりにならないことがあると、物に当たったり、キレやすい心の状態になりました。今でも家のソファーの両側は、蹴ったぐってボッコリ大きな穴が開いてるんですよ。それで、神様に子どもの心の助かりを一生懸命お願いするんですが、このまま育ったらどんな大人になるんだろうと、いろいろ悩んだんです。
 そんな中、四代金光様の有名なお歌の一つである、「ちちははも子どもとともに生まれたり育たねばならぬ子もちちははも」を思い出したんです。

(ナレ)キレる息子を目の当たりにした早羽さん。そんな時、「親も、子どもと一緒に育たなければならない」という教えを思い出しました。そこで早羽さんは、親として育つために、自分の心を点検することにしました。

(早羽)まず始めたことは、自分の心の点検をしようと思って、心の中をのぞいてみたんです。そうして見えてきたのは何かというと、思いどおりにならないと、主人や子どもたちに大声をあげてキレている私の姿がありました。子どもはソファーに穴を開けましたが、私は携帯電話を投げつけて、ふすまにぼっこり大きな穴をあけている跡が今でも残ってるんです。
 もう何を見ても聞いてもイライラモヤモヤするような心の状態という時があったんです。それで、本当に「こんな心の状態は嫌だ」と思ったんですよ。もうどげんか変わりたいなと。

(ナレ)早羽さんは、キレる息子を変えようとするのではなく、自分が変わろうと決意しました。そして具体的な取り組みを始めます。早羽さんはそのことを、「心を作る」「心の土壌作り」と表現しています。

(早羽)身の回りに起きてくることを、「これで大きく豊かになりなさい」と神様が私の心を作るために用意してくださった材料と頂く。それで土壌作りをしようと、本気で決心したんです。
 それは、まず1つ目に、人の悪口を言わない。怒りに任せて人を責めない。優しい言葉を使う。2つ目に、朝昼晩に神様に心を向けて、ご祈念を本当にしみじみとさせていただく。3つ目に、苦手な人を大事にする。このように具体的に取り組んでみました。
 すると、ある時こういうことがありました。子どもがごみを捨てなければいけないところに捨ててなかったんです。以前の私なら、そこで子どもを呼び付けて、怒りに任せて言わなくてもいいことまで引っ張り出して、責めていたんです。でもその時、ふと近くにあった新聞を見ると、「土壌作り」と大きく書いてありました。神様が「これで心の土壌づくりをせよ」と言ってくださっているのだと感じ、子どもを責めないでいい心の状態を頂きました。
 こんなふうに、神様が応援してくださるような働きを感じながら稽古ができたのです。

(ナレ)早羽さんが自分を変えるための取り組みを始めると、息子さんの様子も少しずつ変わっていったそうです。

(早羽)中学校の時が物に当たるピークでしたね。結局、子どもが疲れて帰ってきた時に、私がまたいらんこと言いよったんですよね。眠たいのに、「あんた勉強せんね」やらね。「なんばしよっと。あんたテレっとしてから」とか、そんなこと言いよるから、やっぱり子どもがキレるのは当たり前ですよね。今考えてみればですけどね。
 息子が高校生ぐらいになってからですかね。だんだん、「あら、考えてみたら、物に当たらんごとなったね」というようになりました。ふて腐れたり、かんしゃく起こすこともなくなりました。本当にいつの間にかだったですね。だんだんキレることがなくなって、今では物にも当たりません。
 でも、子どもが変わっていったことはありがたいことでしたけど、何より私自身が大事なことに気付かせてもらいました。もう本当にハリネズミのようなとげとげしい私でした。けど、人を責めて傷付けていたような私が、少しずつ変われたことが何よりもありがたいことだなと今思わせてもらってるんです。
 私が変わると、子どもだけでなく、少しずつではありますが、主人が私を大事にしてくれる。子どもたちが私を大事にしてくれる。両親が私を大事にしてくれる。幸せが生まれる環境というのか、本当にそういうおかげを頂いてくるんですね。
 もし、私の心が変わらなくて、子どもだけ変わっても、私の心はずっとイライラしたままです。モヤモヤした心の状態で一生終わらないかんやったと思うんですよ。でも、子どものことをとおして私も変わろうと思った時に、一年一年本当にありがたいなあという心が育っていってるんですよね。それがなかったら、イライラモヤモヤした心が一年一年積もってたと思うんですね。

(ナレ)もし、息子さんがキレなくなっても、早羽さんの心がイライラモヤモヤしていたら、幸せを感じることはできなかったのかもしれません。相手を変えようとするのではなく、自分が変わる。そこに信心のまなざしがあり、助かりが生まれてきたのです。

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