良いことがいっぱい



●金光教教務総長・年頭放送
「良いことがいっぱい」

金光教教務総長
岩﨑道與いわさきみちよ 先生



 

 皆様、明けましておめでとうございます。
 一昨年から続く新型コロナウイルス感染症が、昨年も私たちにいろいろな影響を及ぼしました。そうした中でも、このように新しい年を迎えられたことを、まずはお慶び申し上げます。
 そして、今年も大変な状況が続くかもしれません。だからこそ、「今年こそは良い年になりますように」と、お願いにも力が入ると思います。
 さて、「信心すると、何か良いことがありますか」と尋ねられることがよくあります。
 金光教のご信心をしているおばあさんと、小学生の男のお孫さんとの会話です。
 「おばあちゃんは、よく教会にお参りするけど、信心すると何か良いことがあるの」と、ある日孫が聞いてきました。息子があまり信心に関心を持っていないことを気にしていたおばあちゃんは、息子を越えて孫に信心を伝えられるチャンスと思って、孫が信心する気になる答えを考えました。
 「信心すると良いことがあるかって。あるよあるよ。信心するとね、勉強ができるようになるんだよ」
 「ほんとに。信心したら勉強ができるようになるの」
 「ああ、そうだよ。神様にお願いして勉強すると、やったことがしっかり身に付くようになるんだよ」
 あまり勉強好きでない孫が信心に関心を持ってもらい、なおかつ勉強も好きになってくれたらと、おばあちゃんなりに考えての答えでした。すると孫は、
 「ふ~ん、そうか。信心すると勉強ができるようになるのか。だったら、お父さん、もっと信心すれば良かったのに」
 思いがけない孫の言葉に大笑いをしたと、楽しい報告を聞かせてもらいました。
 そうとして、「信心すると、何か良いことがありますか」と聞かれたら、私はこう答えます。「信心すると、今あなたが座っているその椅子、その椅子にお礼が言えるようになります」と。
 そうなんです。信心をすると、椅子に座るという、その何でもないこと、当たり前のことにお礼が言えるようになるのです。椅子に座るのは当たり前のことですし、お礼を言うほどのことでもないかもしれません。でも、信心をすると、椅子にお礼が言いたくなってくるのです。毎日使う食卓の椅子や勉強机の椅子、あるいは電車で座った座席、たまたま腰を下ろしたベンチなど、立ち上がる時には思わず「ありがとうございます」とつぶやいてしまうのです。なぜでしょうか。
 金光教では「お取次とりつぎ」ということを大切にしています。お取次とは、神様と私たち人間をつなぐ働きです。そして神様とつながることで、見えない神様のお働きや思いを感じるようになります。ですから、お取次によって私たちは神様と出会うことになるのです。
 そして、神様と出会い、神様の働きや思いを感じるようになると、その神様が私たちにいろいろなことをとおしてお働きかけくださっていることが見えてきます。そうなんです。椅子に座るということも、神様のお働きかけによる出来事として見えてくるのです。
 神様のお働きによって、私がこの椅子と出会い、こうしてそこに腰を下ろす機会が生まれた。そのつながりを気付かせてくれ、その不思議さを感じさせてくれるのが、信心の、金光教のお取次のお働きです。
 そこに椅子があって私が座ったという、目に見えていることだけではなく、そこに至る目に見えない様々なお働きが重なり合って、私は今、椅子に座っている。そうした椅子と自分とのつながりを感じ、そのつながりを結んでくれたお働き、すなわち神様のお働きにお礼をするのが、「信心をする」ということです。ですから、椅子にお礼を言うのは、「椅子に向かって」ということだけではなく、「その椅子をとおして神様にお礼をする」ということでもあります。
 もうお分かりだと思いますが、このように椅子にお礼をするということは、他のことにも広がっていきます。食べ物や飲み物、着る物や住まいなど、「今まで当たり前と思っていたものへのお礼」と、「そのものとのつながりをもたらしてくれた神様へのお礼」が生まれてきます。いえ、それだけではありません。時には、うれしくないこと、ありがたくないことにもお礼が言えたりします。何かの問題に出会って、はじめて当たり前のありがたさに気が付いたという経験は誰にでもあると思います。そうなると、その問題に、そしてその問題をとおしてお働きくださった神様にお礼の心が生まれてきます。
 こうなってくると、信心をすることで、身の回りにはお礼を言うこと、すなわち良いことが次々と生まれてきますし、良いことが次々と見付かってきます。
 これが、「信心をすると、何か良いことがありますか」の、私の答えです。金光教の信心は、このようにして良いことを見付け、出会わせてくれる生き方へと導いてくれます。
 そして、その出会いをもたらすキーワードが「金光様こんこうさま」です。神様に心を向けるこの言葉を唱えることで、当たり前のことへの、そして良くないことへの見え方が変わってきます。
 皆さんの周りには、今年もいろいろなことが起きてくるでしょう。良いことばかりではなく、時には良くないことも起こってくるでしょう。そんな時こそ、私たちが唱える「金光様」というお言葉を唱えてみてください。そのことで今年一年、あなたが神様とつながり、当たり前のことがありがたく思えるだけでなく、良くないことの中にある神様の働きが見えてきて、良いことに変わっていきますようにとお願いさせていただきます。

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