多度津の街角で


●私からのメッセージ
多度津たどつの街角で」

金光教多度津たどつ教会
玉城真紀子たまきまきこ 先生


 おはようございます。
 香川県金光教多度津たどつ教会の玉城たまき真紀子まきこと申します。
 結婚を機に、九州の熊本から四国の香川に来まして、もう30年が経ちました。ラーメン好きから、うどんが好きになっております。
 年月が経ちますとご近所の方とも仲良くなり、なじみになってよくお話しさせていただきます。
 朝、教会の前を掃いておりますと、通りかかる方とあいさつを交わします。
「おはようございます」「行ってらっしゃい」
 親しい方だと「何ができよんな」と声をかけられたり。
 この言葉は何を作っているのか聞いているのではなくて、香川の方言のあいさつの言葉で、最近どう過ごしている?と相手に愛着を持って尋ねる言葉です。
 こう聞かれると、「なんちゃ変わりゃせんよ」。そうすると、「いつも元気やのう」などと言葉を交わします。自然と笑顔で過ごせる日々のあいさつを、ありがたいなあと思います。
 3月の半ばでしたか、こんなうれしい事があったんです。 歩いて買い物に行く途中、一人暮らしのご近所のおばあさんとお会いしました。その方は、90歳近い方ですが、家の前を掃き掃除しておられました。
 私が、「お元気ですか? いつも奇麗にされていますね」と声をかけますと、おばあさんが、「もうすぐ、隣の山本さんの男の子が、お母さんと幼稚園から帰ってくるの。元気よく『おばあちゃん、ただいま』と、あいさつしてくれるからうれしゅうてな。私の息子たちは遠くにいるから、私にとっては、ひ孫くらいの子どもだけど、元気をもらっとるんよー」と笑顔で答えてくれました。
 山本さんは、おばあさんの隣に住んでおられます。3人の男の子がおられて、皆さんとても優しく、明るいご家族です。
 おばあさんは、男の子のかわいい笑顔と元気なあいさつがうれしくて、朝は男の子の明るい声で「行ってきます」。おばあさんは優しく 「いってらっしゃい」。帰りは「おかえり」、「ただいま」と声をかけ合います。
 時には、男の子が幼稚園のいろいろな出来事や、採った虫の話を聞かせてくれたり、帰り道で拾った石を見せてくれたりすることを、とてもうれしそうに、おばあさんは私に教えてくださいました。
 そんな話をしていましたら、山本さん親子が帰ってきました。
 男の子が「おばあちゃん、ただいま」といつものようにあいさつをし、おばあさんも「おかえり」と笑顔で応え、近くにいた私にも「おばちゃん、ただいま」と、男の子は声をかけてくれました。男の子の輝くような笑顔に触れ、私も思わず笑顔になり、うれしく思いました。
 するとおもむろに、男の子のお母さんがおばあさんに向かって、丁寧にお辞儀をされました。そして、このようにおばあさんに言われたのです。「今日は幼稚園の学年末の修了式でした。今年1年間無事に終えさせていただきました。毎日声をかけていただいたおかげで、私も息子も、1年間元気に通園できました。ありがとうございます。お礼申し上げます」と、そんなふうに言うんです。山本さんは日々のお礼に加え、おばあさんへ1年間のお礼をおっしゃられて、私は「なんて素敵な方なのだろう」と感動しました。
 おばあさんは思いがけない言葉に戸惑って、「いやいや」と手を振りながら、それ以上言葉が出ないようでした。男の子は明るい笑顔で、「おばあちゃん、またね。ありがとう」と声をかけ、男の子のお母さんはもう一度振り向き、丁寧なお辞儀をされました。そして、隣の自宅に帰っていかれました。おばあさんと私は、思わず顔を見合わせ、自然と笑顔になりました。
 おばあさんは私に、「笑顔が見たくて声をかけてたのに、思いもよらんかったわ。お礼を言われるなんて、ありがとうと言われるなんて、なんてうれしいんやろうなあ。とてもうれしい。こんなにありがとうと言われるなら、元気でおらないけんのう」と話をしてくださり、会った時よりもさらに元気な顔になっておられました。そして隣の家に向かって手を合わせ、拝んでいるおばあさんの姿がありました。
 おばあさんの拝む姿を見て、私はとてもうれしくて、飛び上がりたいくらいのありがたい気持ちになりました。おばあさんにしてみれば、自分がしたことで相手からこんなにも喜ばれて、言葉にならないありがたさを感じて、山本さん家族を拝まずにはいられない気持ちになられたのだと思います。
 おばあさんに、1年間の心からのお礼をされる山本さん、そんな山本さんに出会えてとてもうれしい私でしたが、さらにそれを受けて、山本さんに向かって後ろ姿を拝まれるおばあさんの姿を見て、私はうれしさが倍増しました。
 喜びいっぱい、私は教会に戻り、こんなにうれしい事があったことを神様に伝えずにはいられませんでした。ありがとうございますとお礼の心があふれました。
 神様は、何気ない多度津の日常の中に、こんな素敵な嬉しい出会いを私に下さいました。

タイトルとURLをコピーしました