●信者さんのおはなし
「ガラス食器を扱うように」
金光教放送センター
(ナレ)福岡県は筑前町にある、金光教夜須教会にお参りする砥板峰子さんは、年齢が60代半ばになるご婦人です。4人のお子さんと7人のお孫さんに恵まれ、今は夫と二人で生活しています。
峰子さんは24歳の時、4歳年上の文孝さんと結婚しました。以来、夫婦に訪れた幾度かの転機を経て、今は夫が立ち上げた、キッチン用品のインターネット通販会社で働いています。そこで扱うのは、ガラス製の耐熱ボウルや保存容器、お皿やお茶碗など、多岐にわたります。家でも仕事場でも、ずっと夫と一緒です。
(砥板)私たちずっと朝からですね、ずっと一緒にいるんです。朝起きて、朝参りしましてね、帰ってきて朝ごはん食べて、昼ごはん食べて、ずっと一緒におるんですね。で、「あんたたちけんかせんと?」と人から一回だけ聞かれたことがあるんですけど。なんかけんかするともったいないよねって。時間ももったいないし、心もなんか穏やかでなくなるし。「けんかしたらもったいないですよね」って言ったことがあるんですけど、「そう!」って感心されてましたけどね。ムッと来る時はあるんですけど、「あっ、待て待て」と。「夫婦仲良くせよ」って言ってあるから。主人も私に対して何も言いませんしね。なんかやっぱり夫婦げんかって自分の領分の中に入ってこられると嫌だから、そこのところは行かないようにして(笑)。でもそれって誰もが当てはまりますよね、親子関係でも、友人関係でも、夫婦に限らずですね。それとか、人を尊重するとか、そういうのはですね。そしたらけんかがなくなるんじゃないかなって思う時もありますね。
(ナレ)このようにお互いを信頼し、尊重し、毎日仲良く暮らすお二人は、これまでどんな生き方をしてこられたのでしょう。
お二人はともに金光教を信仰する家庭で育ちました。教会の先生からは、「お礼が六分、おわび三分、お願い一分」と教えられ、その教えをずっと大切にされています。お礼は、恩に報いること。おわびは、改まること。お願いは、すがることです。二人は、毎日の生活の中でその教えに取り組み、お礼とおわびを大切にしていると、お願いは自然に付いてくるのだと実感されていきました。
夫である文孝さんは、48歳の時に、勤める会社でリストラを経験しました。しかし、すぐに今の会社につながるキッチン用品の販売会社を立ち上げることができ、順調に売り上げを伸ばしていきます。しかし、文孝さんが58歳の時、大腸がんと胃がんを患っていることが分かりました。
峰子さんはこの時54歳。当時の勤め先では、管理職の立場にありました。すぐに頭に浮かんだのは、数年前に亡くなった夫の母のことです。仕事で忙しい自分の代わりに、よく子どもたちの面倒を見てくれた母でした。母の体の具合が悪くなっていった時に、もっと母の看護をしてあげればよかったなあ、という心残りがあったのです。だからこそ、今度は後悔がないよう、夫の看護をしてあげようと、スパッと仕事を辞める決心が付きました。
峰子さんの看護の甲斐もあって、文孝さんの手術は成功し、順調に回復していきました。その後、峰子さんは夫の会社で働くことになったわけです。
「恩に報いる」というお礼を大切にする砥板さん夫婦の生き方は、お世話になる人を大切にする、物を大切にすることにつながって、今のキッチン用品販売会社の経営姿勢にも生かされています。たった4人だけの会社ですが、お客様を大切にする対応によって、今では超優良販売サイトとして評価されるようになりました。
また、こんなエピソードも教えてくれました。
(砥板)孫が7人おりましてですね。3歳くらいの孫がたぶん保育園で習っていると思うんですけど、靴をきちんとそろえて上がるんです。うちに遊びに来た時にですね。普通でしたらポンポンと脱いでですね、上がってくるところなんですけども、後ろを向いて、そろえて上がってくるんです。一緒に住んでるわけではないからですね、その光景がとってもかわいくてですね。そしたら主人もですね、いつの間にか、そういうようなことをするようになったんです。毎日、毎回ですね。帰ってきたら、そろえて上がってくる。そういうのはしてますね。
(ナレ)決しておごることなく、周りから吸収していくという文孝さんの姿勢は、教会で教わった、「ありがとうを1日に千回言う」というお話をすぐに実践することにもつながっています。
(砥板)千回も言うなら、何を言ったら千回になるかいなと思って、試してみたそうです。そしたら、朝起きて、ありがたいなと思って「ありがとうございます」。枕見たら「ありがとうございます」。ずっと数えよったら、車も降りた時には「ありがとうございます」と言ってたけど、乗る前にも「ありがとうございます」。ドアを開けて「ありがとうございます」。ハンドル持って「ありがとうございます」って言ってたら、「ほう、やっぱり千回くらい言うばいね」と自分で言っておりましたからね。そのありがとうと言う感謝の言葉はですね、最初の頃はですね、「あざーす」「あざーす」て聞こえてたんです。「ありがとうございます」を短縮して。「あざーす」「あざーす」という言葉がありますよね。あんなふうに聞こえてたんですけど、何言いよるかと思ったらお礼を言ってたんです。「ほんとに千回以上言うよね」って話しておりましたからね。ありがとうという感謝を心の中で、と思いますけども、口に出して言っておりますね。
(ナレ)ご夫妻は、これまで、リストラや病気などの大きな難儀があっても、「なんとかなるさあ」と神様に心を向け、売り物のガラス食器を扱うように、周りの人や物を丁寧に扱い、「恩に報いる」生き方で、しなやかにその都度その都度おかげを受けてこられました。全てを明るく軽やかに語る峰子さんの表情は、「これからも何があっても大丈夫、二人で乗り越えられる」と自信に満ちています。先祖から受け継いだ信心というバトンを、今度は子どもたち、孫たちに受け継いでもらいたいと願っての二人三脚は、今日もその歩みを続けています。