●第3回
「かんべむさしの金光教案内5」
金光教放送センター
おはようございます。「かんべむさしの金光教案内」、3回目の今朝は、教典に出てくる大勢の信者さんの中から、「うらやましいなあ」とか、「ははあ。こういう人もいたのか」とか、私の心に残ったエピソードをふたつ選んで、お話をさせていただきます。
一つ目は、秋山米造という、子供時分から教祖さんのところへ参ってた人と、その兄の熊吉という人についてのお話です。米造さんは、まだ14歳の頃に、すでに教祖さんから、「秋山は信心が好きであるなあ。人の助かるような信心をしなさい」と、言ってもらえてました。そしてのちに、兄弟一緒に参った時には、こう言われました。
「弟は不器用であるから、おかげを受けて人を助けてやれ。兄は手先が器用だから、そのほうで出世をさせてやろう」
そして、この兄の熊吉さんは彫刻、彫り物の道に進んで、名を上げたんだそうです。
それで私、初めてこれを読んだ時、本当にうらやましかった。というのが、作家なんて不安定な仕事ですからね。自分も駆け出しだった若い時代に、まだ金光教には全く無関係でしたけど、もし御縁を頂いてて、教会の先生からこういう、先を保証してもらえるようなことを言ってもらってたら、どれだけ安心できたことかと思ったわけです。
別の信者さんで、「綿打ち」の仕事をしてる人が、あまり繁盛しないのでお願いに参ったら、教祖さんから「暇のないようにしてやろう」と言ってもらえて、それからは、いつも仕事があったという、そんな話も教典に載ってまして。これなんか思わず、「私もそうしてください」と、心の中でお願いしておりました。
もちろん、そうやって願って、仮に保証してもらえたとしても、本人が怠けてたら、それが実現するわけはありませんから、そのお言葉を無にしないよう、一層の努力をしなければならない。お願いしつつ、自分も努力する。それが人間として、信心する者として、取るべき姿勢だとは思いますけどね。
ちなみに、先ほどの秋山兄弟、兄は彫刻家になりましたが、弟の米造さんは教祖さんのお言葉どおり、信心を進めて人助けの道に入り、のちに岡山市の天瀬というところで、教会を開かれました。そしてそこは明治・大正・昭和と発展して、現在、金光教天瀬教会という大きな教会になっております。
さて。二つ目は、教祖さんと同じ浅口郡大谷に住んでた、大西秀という、女性の信者さんのお話です。明治時代の中頃、この人がまだ娘時分に、鉄道を通す工事が始まりました。今の山陽本線ですが、秀さんは友達二人と一緒に、それを見に行ったんですね。
ところが友達の一人が、現場作業の監督をしてる男性が好きなもので、その人に会いたいからと言って、夕方になって、「帰ろう」と誘っても帰らない。仕方がないので、もう一人と一緒に帰ってきたんですが、そしたらその父親が、「一人だけ置いてくるとは何だ。もう一緒に遊んでくれるな」と、かんかんに怒りました。
さあ。自分が悪いわけでもないのに偉そうに言われた秀さん。腹が立って仕方がないので、教祖さんのところへ参って訴えました。
「私は腹が立って、晩ごはんも食べられませんし、今夜は眠れないほどです」
そしたら教祖さんが、「立った腹は、そこへ置いて帰りなさい。神様にお願いさえしておればよろしい。今晩中に向こうから謝りに来るから、そう苦にしなくてもよい」と、穏やかに言ってくださいました。で、結局どうなったかというと、怒った父親の代わりに母親が謝りに来てくれて、次の日からはその父親も優しくものを言ってくれたそうです。
しかし、今この放送を聞かれてる皆さんの中には、「それと信心と何の関係があるのか。そんなつまらんことを、訴えてもいいのか」と、そう思われた方がおられるかもしれません。でも実は、それでいいんですね。
さっき申しました先の仕事のことでも、あるいは今の話の愚痴みたいなことでも、金光教では、「どんなことでも願え。箸の転んだようなことでも願え」と教えられておりまして、全国各地にある教会では今も、教会長や所属しておられる先生方が、毎日毎晩、その聞き取り役を勤めておられます。
信者さんたちは、日常生活の中での、嫌な事、心配な事、困ってる事、また逆に、嬉しい事、安心した事、ありがたかった事など、何でも遠慮なく話しておられますし、聞き取った先生は、それらを全て、神様に取り次いでくださっています。
願いの成就や、難儀の解決を祈ってくださり、同時に信者さんには、そのためにはどうすればいいか、どうすべきなのかを、神様の教えや、教祖さんの教えを元にして教えてくださる。そしてまた、事に応じて神様にお礼を言い、お詫びを申し上げ、細かくお願いもするようにとも、教えておられる。お礼・お詫び・お願い。先生の親切な取次とともに、これが金光教の根本になってるわけです。
というところで、時間が来ました。来週は松井ツル先生という、京都の方のお話をさせていただきます。ありがとうございました。