●教師インタビュー
「あなたが私をいじめるのなら」
金光教放送センター
(ナレ)大阪府にある金光教堺教会で生まれ育った白神ナナさん、25歳。8人兄弟の7番目に生まれたから「ナナ」という名前なんです、と明るく笑うナナさん。ナナさんは中学生の頃、急に友達からいじめを受けるようになったそうです。
(白神)私はもともと小学校からずっと仲のいい子たちと一緒におったんですけど、中学になったらいろんな学校が合わさるんで、小学校からどんどん友だちが増えるじゃないですか。その中で、新しく仲良くなった子が、急に、私がもともと仲良かった子の悪口を言ってたっていうふうに言いふらして。ま、それはその子が他の子たちと仲良くなりたいがために言った嘘なんですけど、みんなそっちを信じてしまって。で、急になんか呼び出されて、本当に漫画にあるような、もう10対1みたいな感じで、どわーって言われて。で、そこからだんだん、休憩時間になるたびにクラスに言いに来たりとか、わざとぶつかってこられたりとか、もう本当、暇さえあれば、嫌がらせをされるみたいな状況でしたね。
(ナレ)中学校で新しく仲良くなった友達から、突然嘘を言いふらされて、ナナさんへのいじめが始まりました。その後、いじめられていることをお母さんに打ち明けたナナさん。その時、お母さんから伝えられた言葉は、すぐに受け入れられるものではありませんでした。
(白神)学校行くの、もう本当に嫌で。なんかお母さんに言うのも、家族に言うのも、言いにくいじゃないですか、いじめられてるっていうこと。でもやっぱり学校行かへんってなったら、結局ばれるから、もう言わなあかんと思って、まあお母さんに「今、実はいじめられてて」みたいな。
もちろん母も、最初からは否定せずに、全力で「大丈夫?」みたいな感じで受け止めてくれたんですけど、やっぱ2、3日経ったら、「ずっとそうやって相手を憎んでたらあかんよー」って言ってくれて。で、「そうやって相手を憎んでたら自分がずっとしんどいから」って。相手がいじめをしている状況って良くない状況じゃないですか。なので、「そういうことをせえへんような心になるように祈っていきなさいよ」って言ってくれたんです。まあ最初はその言葉も私は、「なんで相手のこと祈らなあかんねん」って思ってたんですけど。
やっぱり受け入れられないじゃないですか。だって嫌がらせされて、しかも自分が言ってもない嘘で。それをみんなが信じて、で、ずっと嫌がらせを受けるっていう状況が受け入れられなかったんですけど、まあそういう母の言葉があったから、祈るっていう方向が見えたというか。今までは憎むっていう道しかなかった、その考えしかなかった、そんなしんどさだったけど、そこに祈るっていう選択肢もできたっていう感じですね。
すぐには祈れないんですけど、本当に。でもだんだん自分の気持ちも落ち着いていって。もともとやっぱ仲良かった子なんで、そういうことしてるのも、それを見るのも、あんまりうれしくないというか。だんだん祈れるっていうか、まあそういう、憎まない方向に、自分の気持ちを持っていくことができたっていうのはありますね。
(ナレ)ナナさんは「すぐに相手のことを祈れたわけじゃない。でも、もともと仲が良かった友達なので、いじめをしているのを見るのもうれしくなかった。それでだんだん祈れるようになっていった」とその時の胸の内を語ってくれました。
ナナさんは、相手を憎む道から祈る道へ、心の向きを変えていったのです。相手のことを祈っていく中で、事態は思いもよらない展開を迎えます。
(白神)だんだん私へのいじめが薄れていって、また次のターゲットになるタイミングがあるんですね。その次のターゲットも、私と同じクラスの子やったんですけど、その子がターゲットになる時に、私も、そのいじめてるグループの子から言われるんですよ。「次、あいつやから」みたいな。「無視してな。あいつのこと無視してな」って言われるんです。その時に、普通やったら、自分がいじめられたくないから、無視するとか合わせてしまうと思うんですけど、その時はなぜか、「いや、自分はやらへん」っていうような言葉が、すっと言えたんですよ。で、それは、私からしたら、本当になんか自分で言った言葉とは思えなくって。あー、なんかこれが神様が言わせてくれた言葉なんやなって思ってて。
もちろんそこに、母が祈ってくれてたっていうのもあると思うんです。そういう部分も絶対あったのかなって思いますし、それが2回ぐらいあったんですよ。いじめに誘われて、「次はあいつな」とか、「あいつ、こう言ってたよな」って私に悪口を促すような状況とかもあって。そういう普通やったら合わせてしまうような状況でも、合わせへん選択ができた、合わせへん選択をさせてくれたっていうのが、私には自分の言葉ではなくって、ぱって神様が言わせてくれたように思えて、すごいそれが思い出に残ってますね。記憶に残ってます。
(ナレ)その後、ナナさんへのいじめはなくなっていったそうです。また、ナナさんがいじめに加わることを拒否したことで、いじめられる予定だった子から感謝され、友達になっていったそうです。そして、それをきっかけに、クラスのいじめ自体がなくなっていきました。
それは、いじめていた子たちもまた、助かっていったということではないでしょうか。ナナさんの祈りは、神様が言わせてくださった言葉として現れ、ナナさんだけでなく、いじめていた子たちも、いじめられようとしていた子も、みんなが救われていきました。
ナナさんはこの経験から、「どんなにつらい状況でも、神様に祈っていくことで、絶対に神様がいいようにしてくださると実感している。それは揺るぎないです」と熱く語ってくれました。
現在、ナナさんは金光教教師となり、教会での奉仕に加え、生きづらさを抱える人たちに寄り添う活動をしています。