私が同性愛者であるということ


●教師インタビュー
「私が同性愛者であるということ」

金光教放送センター


(ナレ)兵庫県赤穂あこう市にある金光教加里屋かりや教会で奉仕している井上真之いのうえまさゆきさんは、平成30年に、「金光教LGBT会」という団体を立ち上げました。「LGBT」とは、女性同性愛者のレズビアン、男性同性愛者のゲイ、両性愛者のバイセクシャル、性同一性障害のトランスジェンダーのそれぞれの頭文字を取った総称で、セクシャルマイノリティー、性的少数者を指します。真之さんがこの会を立ち上げたのは、自身が同性愛者で、悩み苦しんだ経験があったからです。
 真之さんは小学6年生の頃から、「女の子っぽい」と、同級生にからかわれるようになりました。 

(井上)年齢が上がるにつれて、そういうからかいがエスカレートするようなところもありまして、だんだんと人が怖くなっていきました。例えば笑い声が聞こえると、自分のことを笑っているのではないかというふうに感じてしまったり、人が怖いという気持ちが出てくるようになりまして、授業中にいきなりお腹が痛くなったりとか、そういう心の不安が身体にも出てきたりという事もありました。

(ナレ)真之さんはだんだんと外に出ることすら難しくなっていきます。そして、中学生になり、自分の恋愛対象が同性であることに気づき始めます。自分が周りの人と違うこと、いじめられていることに、悩み苦しむようになりました。そして、そのことを誰にも相談できずに、ついには自ら死のうとまでしました。そんな真之さんを心配した家族は、真之さんに、金光教の教会へお参りするように勧めます。
 真之さんは、週に一度その教会に通って、教会の先生に悩みを聞いてもらいました。

(井上)「おかま」だとか何とか言われて馬鹿にされているという事は、親とか家族、学校の先生にはなかなか言い出せないことでしたので、当時、唯一教会の先生にだけ言えるというような感じのこともありました。苦しんできた事を吐き出すのは簡単なことではなく、例えば学校で嫌がらせを受けた事を話す時には、いじめっ子に囲まれているシーンが蘇ってきたりして、呼吸が苦しくなるような事もありましたけれども、教会の先生にお話をさせてもらうと、一つ心の傷を癒やしていただけるのか、楽になって、帰る頃にはとてもすっきりしていました。

(ナレ)真之さんは日々、「人が怖くならない自分にならせてください」と神様に祈りながら、今日はコンビニ、明日は郵便局など、目標を立てて外に出る練習をしました。その甲斐もあって、しだいに外出ができるようになり、社会と関わることができるようになっていきました。
 しかし、恋愛対象が同性であることに変わりはありませんでした。16歳の時にそのことを教会の先生に相談し、両親にも打ち明けました。どちらも優しく受け止めてくれました。それからの真之さんは、「女性を好きになれますように」と祈りながら信心を続けました。
 その後、真之さんは金光教の教師になりました。しかし、祈っても祈っても同性愛者であり続ける自分を、信心が足りないからだと、責めるようになったのです。ところがそれでも祈り続けるうちに、LGBTの当事者と出会う機会が続くようになり、真之さんは、ある思いに至ります。

(井上)神様がもしかしたら私に、「このまま生きていったらどうか」とおっしゃってくださっているのかもしれないなと思いまして、教会の先生に、「10年間私は異性を好きになれるように努力もし、またお祈りもしてきました。けれども変わることはなさそうです。同性愛者として生きていこうと思います」ということをお届けしました。そうすると、「ありのままで生きていっていいと思いますよ」と、声をかけてくださいました。
 神様が、私の「異性を好きになりますように」という祈りをとおして、そのとおりのおかげというよりは、私の命に応じた導きをしてくださったなあというふうに感じています。25歳くらいの時ですかね。ようやく自分で自分のセクシャリティーを受け入れる、受け止めることができるようになりました。
 私は受け入れてもらって長年の苦悩から解放された日々を送っていますけれども、話ができる人との出会いがない人とか、あるいは「悩んでいても人には言えない人が世の中にはたくさんいるのではないかな」というふうに思いまして、そういう人たちに助かってほしいな、という願いが出てきました。まあ、そうは言ってもですね、ゲイであることを公表してですね、働きかけていったり御用をさせていただくということは怖いことでありました。そんな時に、ある別の教会の先生とのご縁を頂きました。

(ナレ)その先生に、これまでの経緯を話すと、「誰が敵になっても、神様はあなたの味方です。あなただったら乗り越えて人助けの御用ができるから、神様がそのセクシャリティーを授けられたんですね。どうかLGBTの方たちが金光教でも助かるように、扉を開いてください」と笑顔で言ってくれたのです。

(井上)それまでは「同性が好きである」ということは、自分にとってマイナスなことだと思っていたんですけれども、役割の一つなのだというふうに、前向きに感じられるようになりました。
 LGBTの正しい理解が広がるようにと願って、あるいはですね、自分を否定して苦しんだり、信仰をしていても、違う解釈をしてしまって、自分を否定してしまう、そのようなことから解放されて性的マイノリティーを前向きに捉える働き、前向きに捉える信仰がもっと生まれるようにと願って、金光教LGBT会を立ち上げることになりました。

(ナレ)信心しても変われないと、自分を責め続けた真之さんでしたが、同性愛者の真之さんにだからこそ、かけられた神様の願いがありました。
 自分が他の人と違う、と悩んでいる方へ。真之さんからのメッセージです。

(井上)今悩んでいる方もそのことに道が付いてきて、いつかその悩みや苦しんできたことが、自分のためだけでなく、誰かのために活きてくるようなことがあれば、それは神様の喜びにもなりますし、自分の財産にもきっとなると思います。乗り越えるところまでは大変ではありますが、あなたは一人ではないと思います。私たちは違いのある人間同士です。一緒に生きていけたらなあと思います。

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