かけがえのないわが子


●教師インタビュー
「かけがえのないわが子」

金光教放送センター


(ナレ)岡山県にある、金光教乙島おとしま教会で奉仕する、岩本信治いわもとしんじさん、48歳。2歳下で金光教教師の妻、ふく先生とは、40歳の時に出会いました。にこやかな笑顔と、神様に向かうまっすぐな姿勢が、印象的だったといいます。ほどなくして、2人は結婚。夫婦生活は苦労もありましたが、神様に心を向け、力を合わせて、日々を過ごしてきました。
 そんな夫婦の1番の願いは、わが子を授かること。しかしそれは、簡単なことではありませんでした。

(岩本)まぁおかげさまで、結婚させていただいて早々に妊娠が分かりまして、2人とも喜んで。まぁ無事に生まれてくるようにということで、願って過ごしていたんですけれども、どうもその、赤ちゃんの状態がですね、大きくならないといいますか、怪しいと。結局流産ということになりまして…。まぁとてもショックを受けました。
 医師の診断によると不育症ふいくしょうというものに該当するようで、妊娠はするけれども、そこからなかなか育っていかないと。その不育症ということを受けて、夫婦で話し合ってですね、私たち自身がまだ育ってないから、不育だからですね、そうなってしまうんじゃないかという、信心の足りなさをお互いに反省したり、嘆いたりすることもありました。
 そういう中で、ご本部でお取次を頂いたりしますと金光様からですね、「世の中では『不妊治療』というふうに言うかもしれませんけれども、このお道では『懐妊治療かいにんちりょう』と言いますから」というふうにですね、おっしゃっていただいて。

(ナレ)流産の経験と、不育症の診断に、わが子の誕生を願う2人は、大きなショックを受けます。そんな2人を支えたのは、金光様の「懐妊治療」という言葉でした。不妊を治すのではなく、懐妊を願っていく。そう心の向きを変えて、あきらめることなく、前向きに取り組み続けます。しかし、それからも、妊娠はするものの、最終的には流産に至ってしまう。その繰り返しで、2人の心は沈んでいきました。そんな時、医師から提案されたのが、体外受精でした。

(岩本)ふく代先生は4回流産していまして、自然に授かるのは難しいなという中でですね、お医者さんのほうから、体外受精というものを勧められまして。ただもう年齢的に、特にふく代先生の体に負担が大きいということもあって、一回限りですけども、まぁ願いを立てて、体外受精をさせてもらうことになりました。
 で、いよいよ明日、体外受精がうまくいくかどうかという、その前日にですね、倉敷市の児童相談所のほうからお電話がありまして。

(ナレ)その電話は、「里親として、現在8カ月の男の子を預かってもらえませんか?」というものでした。

(岩本)その数年前に、里親として我々も登録してたんですね。まぁ流産を2回3回と繰り返していく中で、本当に命を授かるということが簡単じゃないと。むしろ奇跡的なことなんだなぁと。それと同時にですね、私の中で芽生えてきた思いというのがですね、この世の間に生まれてきた子どもさんは、自分の血がつながっていない子どもであっても本当に尊いことだし、大切にしていきたいなという思いが芽生えてきてですね。そういう道があるんであればということで、研修に行かせていただいて、登録してたんですね。

(ナレ)里親登録はしていたものの、数年間、音沙汰がありませんでした。それが、体外受精の結果が出る前日に、連絡がきたのです。もちろん、結果が出てから判断してもよかったのですが、2人はそうしませんでした。里親を頼らざるを得ない子どもがいるのなら、わが子を授かったとしても、一緒に育てていきたい。そう心を決めて、子どもを受け入れると返事をしました。
 次の日、医師から聞かされたのは、2人が望んだ結果ではありませんでした。

(岩本)私もそうですし、特にふく代先生はですね、とても落ち込みまして。今までにないようなね、苦しみを味わうことになったわけですけども。頭の片隅にですね、昨日、その児童相談所から預かってほしいという連絡を受けてたな、ということが、もう2人にとっての、生きる甲斐と言いますか、そのことでですね、救われた2人がいたなぁというふうに、今振り返ると思いまして。もしそういうものがなければ、2人ともどうなってたかなぁというふうに思いますね。
 まぁ本当に神様がですね、先回りをしてそういう生きる道をですね、用意してくださってたのかなというふうに、今振り返って思わせていただいてます。

(ナレ)しばらくして、正式に里親として子どもを預かることになりました。その後、さらにその子の弟も預かることになります。幸いにも、子どもたちは新しい環境にすぐに慣れてくれました。はじめは、子どもを受け入れることに不安もありましたが、子どもたちの成長していく姿、元気に遊んでいる姿を見ているうちに、その気持ちも次第に薄れていったそうです。

(岩本)もうすっかり家族というかですね、私たちにとってもかけがえのない、子ども同様の存在になってくれてます。くっついて寝てる寝顔とか見るとですね、本当に兄弟というのはいいなぁっていうふうにですね、まぁ夫婦で話したりしてますけども。
 毎日振り回されて大変なんですけども、まぁこうやってですね、世の中のお父さんお母さんは子どもさんを育てておられるわけですし、私たちもそうやって育てていただいたんだなっていうことを感じさせていただきながらですね、日々、神様が下さったおはからい、お授けくださった救いの手といいますか、そういったお働きを感じさせていただきながら、日々の生活をさせていただいているという感じです。

(ナレ)2人が思い描いた懐妊治療ではありませんでしたが、岩本さん夫妻は、この世に生まれてきた子どもたちは、血のつながりに関わらず、みんな尊い命なんだということに気づきました。そうして出会った子どもたちは、かけがえのないわが子そのもの。子どもたちの健やかな成長を願いながら、家族仲良く暮らしています。

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