シリーズ「あなたへの手紙」第4回「①長生きしていいことがある?/②お墓のことが気がかり」


●あなたへの手紙
第4回「①長生きしていいことがある?/②お墓のことが気がかり」

金光教放送センター


おはようございます。兵庫県にあります金光教出石いずし教会の大林誠おおばやしまことと申します。よろしくお願いします。
 最初は、たか子さんという56歳の主婦の方のお悩みです。

 「最近、急速に身体が衰えていくのを感じています。疲れがなかなか取れませんし、ちょっと無理をするとすぐ腰が痛くなり、夫に手伝ってもらっています。50代でこの調子だと、10年後、20年後はどうなるだろうか、長生きして、いいことがあるだろうかと、とても不安になります。生き生きとしているお年寄りを見ると、すごいなあと思いますが、私はそんなふうになれそうもなく、将来に希望が持てません」

 こういうお悩みです。

 本当に、年を重ねるにつれて、体にいろんな変化が起こってきますよね。そしてその変化を、なかなか受け入れにくい。よ~く分かります。
 江戸時代の武士で、横井也有よこいやゆうという人が、こんな狂歌を詠んでいます。

しわはよるほくろは出来る背はかゞむ あたまははげる毛は白くなる
○手はふるふ足はよろつく歯はぬける 耳は聞へず目はうとくなる
○くどふなる気短かになる愚痴に成る 思ひつくこと皆古ふなる
○聞きたがる死にともながる寂しがる 出しやばりたがる世話やきたがる

 60代の私にはズキンとくるものばかりです。でもこの作者は、どういう気持ちでこれらを作ったのか。どうも、老いゆくわが身を嘆いて、というよりも、逆に面白がっているような気がするんですね。
 ネットでシルバー川柳を検索してみても、実に多くの方々が、自分自身の老化をわらうすてきな作品を編み出しています。「生き生きとしているお年寄り」とは、たとえ体は弱っても、こういうセンスを持った方々のことではないでしょうかね。
 年を重ねることで、ようやく見えてくることがあります。たか子さんも、いろんな発見をされたことでしょう。若い頃は、年を取るとこんな気持ちになるなんて想像もできなかった。親たちも老化に伴う苦労がいろいろあったに違いない。それなのに、親の愚痴っぽさを批判したこともあったなあ。気の毒なことをした…。そんな反省ができるのも、少し賢くなれたということです。夫婦でしみじみと、そんな語らいができるのも、人生の味わいではないでしょうか。
 体が健康でなければ生きがいが持てないとか、経済的に豊かでなければ自分らしく生きられないとか、そんな価値観にいつまでもこだわっていると、年を取ってからの人生はとても惨めなものになってしまう危険性があります。健康もお金も、いつ消えてしまうか分かりませんからね。
 ですから、死ぬまで決して消えることのない生きがいをしっかりとつかんでいくことが、たか子さんの、いや、若い人も含めて全ての人の、大きな課題ではないでしょうか。金光教の教会では、楽しみながらそのことに取り組んでいます。
 念のために付け加えますが、疲れが取れない、すぐ腰が痛くなるというお悩みでしたね。それは本当に年のせいなのか、放っておいてよいものかどうかは分かりませんから、お医者さんにも診てもらってくださいね。

 次は70代の主婦の方のお悩みです。

 「母が105歳で亡くなり、先日、先祖代々のお墓に納骨を済ましたところです。次は私たち夫婦の番かと思うと、先々のことが気にかかります。一人息子は結婚して遠方で暮らしていますが、子どもは授かりませんでしたので、この家系は息子の代で途絶えることになります。そこで、息子たちに課題を先送りすることのないよう、元気なうちにできることをしておきたいのです。何をどうすれば亡くなった両親や先祖たちに安心してもらえるでしょうか」

 このようなお悩みです。
 
 105歳ねえ。お母様はご長命を頂かれましたね。皆さんで心を込めてお世話をしてこられたんじゃないでしょうか。お母様への思いが「どうすれば安心してもらえるか」という言葉からも伝わってきます。そのお気持ちそのままに、ご先祖のお墓も大切にしてこられたんでしょう。
 お墓というのはありがたいもので、それがあるおかげで、亡くなった人たちがいつまでも慕わしく思えるんですよね。遠くからお参りすると、「よく来たなあ」と声が聞こえる気がする。掃除に汗を流せば、喜ぶ笑顔がまぶたに浮かぶ。愛されて育った懐かしい記憶がよみがえって、元気が出る。
 息子さんたちご夫婦にとっても、先々、そういう大切な場所になるんじゃないでしょうか。ですから、墓じまいなどということを早くから考えないほうがいいですよ。お墓を重荷のように思うのではなくて、むしろ力強い心の支え、あるいは人生の道しるべのように感じるようになってくれるといいですね。そこで、元気なうちに取り組むべきことは、先々お墓がそういうありがたい場所になるように、息子さんたちとの間柄をよりよいものにしていくことではないでしょうか。
 もちろん、息子さんたちのために、ご先祖をもっと身近に感じられるようにしてやりたいという積極的な願いがあって、お墓をどうするか考えておられるなら、それも良いことなのかもしれません。
 息子さんたちとよく話し合って、ご先祖を大切にする心を伝える機会にしていただきたいと思います。

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