●先生のおはなし
「きっと大丈夫。」
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新潟県
金光教直江津教会
中西教幸 先生
(ナレ)おはようございます。案内役の大林誠です。今朝は、新潟県、金光教直江津教会、中西教幸さんのお話で「きっと大丈夫。」。
私は27歳の時に結婚し、新婚旅行は妻がずっと行きたいと言っていた、美ら海水族館がある沖縄に決まりました。旅行の計画に慣れていない私たちのために、宿泊先や航空チケット、レンタカーの手配などはすべて、妻のお父さんがしてくれました。
旅行一日目は、現地の知り合いにお願いしていろいろな所に連れていってもらいました。二日目からは二人旅でしたが、目的地は美ら海水族館と決まっていたので下調べも完璧。楽しく過ごすことができました。
最終日は、帰りの飛行機が夕方の便だったので、それまでレンタカーで平和祈念公園や資料館などをゆっくりと巡り、戦時中を想い、二人で今こうしてこの地を訪れていることに感謝しつつ、互いに涙しながら、沖縄での新婚旅行は最高の締めくくりを迎えました。と言いたいところなのですが、これから先の私たち新婚夫婦の行く末を占うかのようなクライマックスは、実はこの後に待っているのでした。
後は空港近くのレンタカー屋さんに車を返して、空港に行くだけ。そう思い、カーナビで検索し、車を走らせました。道はやや混んでいましたが、時間的にはまだ余裕があります。
「目的地付近に到着しました」。カーナビはそう言いましたが、そこは全く見覚えのない場所でした。戸惑いつつもお店に入ると、「ご返却は当店ではありませんね。こちらでもご返却いただけますが、空港に行かれるのなら、やはり空港近くの店舗で返却されたほうが便利ですよ」と説明されました。なんと、検索を間違えて、空港から離れた別の店舗に来てしまっていたのです。慌てて検索し直し出発することに。しかしそこから空港までの道は大変渋滞していて、とても間に合いそうにありませんでした。
「もし間に合わなかったら…」。決して安くはない飛行機代を無駄にした上、チケットの取り直し。さらに今日の便が取れなければもう一泊することになる。そうなればお金の問題だけではなく、この後、実家で予定していたいろいろなことにも影響が出てくる。そんなことを考えながら運転していると、こんな思いが湧き起こってきました。
「なぜ妻は自分に任せっぱなしで、確認してくれなかったんだ。もし彼女が気づいてくれていれば、こんなことにはならなかったんじゃないか」
疲れと焦りからか、妻を責める思いがフツフツと込み上げてきたのです。しかし、そんな思いを抱えつつも、「神様! どうか間に合いますように!」と心の中で祈っていました。
そうすると段々気持ちが落ち着いてきて、「そもそもたくさんの人のお世話になってこれまで楽しく旅行ができたのに、これで妻を責めてケンカでもしたら全てが台無しになるじゃないか。彼女もこれから先、新婚旅行を思い出すたびに、自分のせいにされたとイヤな思いをするだろう。間に合わなくてもきっと大丈夫。神様がいいようにしてくださる」。そう思い直し、渋滞の中を進みました。
ようやく空港近くのレンタカー屋さんに着いたのが、ちょうど飛行機の出発時刻でした。
「駄目だったね。でも新婚旅行が一日増えたと思って喜ぼう」
そう妻と話しながらとりあえず空港に入り、これからのことを相談しようと窓口に向かいました。すると、「風の影響で飛行機が2時間遅れております」とスタッフの方。私たちからすれば、「青天の霹靂」ならぬ「霹靂の青天」とでも言うのでしょうか。空港上空の強風により、飛行機は飛べずにいたのです。びっくりしましたが、私は、「本当に怒ったり責めたりしなくてよかった」と改めて安堵し、妻と喜び合ったのでした。
金光教の信心でとても大切な言葉に「おかげは和賀心にあり」というものがあります。「和賀」は、平和の「和」に、年賀状の「賀」という字を書きます。「人の助かりは和らぎ喜ぶ心にある。その心にこそ神様が現れ働いてくださる」というような意味だと思っています。
検索を間違え、焦った私の心には、妻を責める気持ちが湧き起こってしまいました。しかし、神様に祈ることで、私の心は落ち着き、「大丈夫」と思うことができました。
結果的には予約していた飛行機に乗ることができたのですが、しかしそれ以上に、「妻を責める心」から、「きっと大丈夫。神様がいいようにしてくださる」という、この和らいだ安心を得たこと、そして失敗の中でも喜びを見い出せたことこそが、私たち夫婦にとっての、本当に大きなおかげだったのだと思っています。
あれから17年が経ちました。私たちはまだ一度も夫婦ゲンカをしたことがありません。
(ナレ)いかがでしたか。ハラハラするようなハプニングがあったことで、お二人にとっては、楽しいだけではない、格別に思い出深い新婚旅行になったようです。
和賀心、和らぎよろこぶ心に神様のおかげが現れてくる。このことを身に染みて学んだことが、今の幸せにつながっているんですね。それにしても、17年間、一度も夫婦ゲンカなしとは、すごい!